ロヒンギャ難民、食糧支援が半減の危機 資金不足で 援助削減も影響

2025/03/20 12:41 

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 ミャンマーのイスラム系少数民族「ロヒンギャ」が迫害から逃れて暮らす隣国バングラデシュの難民キャンプで、資金不足により食糧支援が半減する可能性がある。米国や欧州諸国の対外援助削減の影響も懸念されており、現地を訪れた国連のグテレス事務総長は「食糧配給が減れば甚大な災害を招く」と警告した。

 バングラデシュ南東部コックスバザールにあるロヒンギャの難民キャンプは、世界最大規模で約100万人が暮らす。国連世界食糧計画(WFP)は、4月までに1500万ドル(約22億円)の緊急支援が確保できなければ、現在の1人当たり月12・5ドル(約1850円)の食糧支援を6ドル(約890円)に減額せざるを得ないと発表した。

 2023年に8ドルまで減額した際には、食糧が十分に行き渡らず、子供の発育不良や妊娠・授乳中の女性の貧血などが深刻化した。危機的な状況を受け、米国の対外援助を担当する国際開発局(USAID)は24年10月に1億2100万ドル(約180億円)相当の支援を提供。WFPは米国の支援が食糧配給の回復に極めて重要な役割を果たしたと評価していた。

 しかし、トランプ米政権は今年1月、対外援助を一時停止。ロイター通信によると、ロヒンギャ難民への緊急食糧支援は、ルビオ米国務長官が2月下旬に凍結を免除したという。ただ、ルビオ氏は今月10日、USAIDの事業の8割を打ち切ったとX(ツイッター)で明らかにしており、今後の見通しは不透明だ。

 WFPの資金不足は、フランスなど欧州諸国の政府開発援助(ODA)削減の影響も受けている。14日に難民キャンプを訪れたグテレス氏は「いくつかの国が財政支援の削減を発表したことで、我々は人道危機の瀬戸際にある」と述べ、「コックスバザールは予算削減の影響を最も受ける」と警鐘を鳴らした。

 一方、国連児童基金(ユニセフ)によると、キャンプの人口のほぼ半数を占める子供の栄養状態はすでに悪化している。重度の急性栄養不良により、緊急に治療が必要な子供は2月時点で前年同期比27%増加。24年には、栄養不良により5歳未満の約1万2000人が救命治療を受けたという。

 栄養不良の背景には、モンスーン(季節風)による長雨で悪化した衛生環境、コレラやデング熱などの感染拡大、近年続く食糧支援の削減がある。加えて、ミャンマー西部ラカイン州で国軍と抵抗勢力の戦闘が激化し、新たに戦火を逃れたロヒンギャ住民が流入。キャンプの負担はさらに増している。【バンコク武内彩】

毎日新聞

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