インダスの水使わせない? 越境テロに怒れるインド、水利条約を停止

2025/04/24 10:06 

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 インド北部カシミール地方であった銃撃テロ事件を受け、インド外務省は23日、テロ事件と隣国パキスタンとの間につながりがあったとして、印パ間でインダス川の水資源の配分を定めた「インダス川水利条約」の履行を即時停止すると発表した。インダス水系はパキスタンにとって死活的に重要な水源のため、印パ間の緊張が増すのは必至だ。

 ミスリ印外務次官によると、モディ首相は23日、内閣安全保障委員会を開催。「パキスタンが越境テロの支援を確実にやめるまで」条約を停止することを決めた。また、パキスタンとの陸路の国境の閉鎖や、在インド・パキスタン大使館に駐在する武官の追放なども決定した。

 インダス川は中国からインド側のカシミールを通り、パキスタンを抜けてアラビア海に注ぐ国際河川。パキスタンにとっては、人口の9割以上が水源として依存している「生命線」でもある。

 インダス川水利条約は1960年、世界銀行の仲介で締結され、全水量の20%にあたる東側の支流3本をインド、西側の支流2本をパキスタンに割り当てることなどが定められた。印パ間でたびたび戦争が起きても維持されてきたことから、「世界で最も成功した水利条約」として知られていた。インドメディアによると、条約が停止されるのは今回が初めて。

 この条約を巡っては、2016年にカシミールでパキスタンからの越境テロが起きた際も、モディ氏が「血と水を一緒に流すことはできない」と語り、条約破棄を示唆したとされる。だが、このときはパキスタンが「条約破棄は戦争行為とみなす」と猛反発し、インドは条約を維持した。それだけに、条約の即時停止はパキスタンにとって大きな衝撃と言える。

 インドとしては、パキスタンに対して強硬な姿勢を示すことで越境テロの抑制につなげたい思惑があるとみられる。ただ、インダス川ではインドが上流でダム建設などを進めているため、パキスタンとの間で長らく争いになってきた。条約の停止を機にインドが上流で水資源の利用を増やせば、水不足に苦しむパキスタンが報復に出る恐れがある。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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