中台が新教皇に送ったメッセージは 前教皇は対中融和路線

2025/05/09 22:43 

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 14億人のキリスト教カトリック信徒のトップに立つローマ教皇に米国出身のレオ14世が選ばれ、世界各国から祝福の声が寄せられた。バチカンは欧州で台湾と外交関係を持つ唯一の国だが、司教の任命権を巡って緊張関係にある中国ともフランシスコ前教皇時代は関係改善を進めた。中台は新教皇にどんなメッセージを送ったのか。

 「バチカンが新教皇の下、引き続き中国と対話し、共に関係改善を進めるよう希望する」。中国外務省の林剣副報道局長は9日の記者会見で「対話継続」に期待感を示した。習近平指導部は今後、レオ14世の下で対中融和路線に変化が生じないかを慎重に見守るとみられる。

 一方、台湾の頼清徳総統は9日、X(ツイッター)への投稿で祝意を表すとともに、「バチカンとの83年に及ぶ外交関係をもとに、平和や正義、連帯と博愛を進めていくことを期待している」と述べた。

 バチカンは台湾が正式な外交関係を持つ12カ国の一つで、欧州では唯一だ。台湾を自国の一部と見なす中国は2016年の民進党政権発足後、台湾と外交関係を持つ国々に圧力をかけ、断交に追い込んできた経緯がある。台湾にとってバチカンは外交空間を守る上で重要な存在で、「断交」となった場合の打撃は大きい。

 当面は次期教皇の就任式に台湾から誰が参列するのかが試金石になる。

 05年のヨハネ・パウロ2世の葬儀に民進党の陳水扁総統(当時)が参列し、中国が強く反発。今年4月の前教皇の葬儀で、台湾側は頼氏の参列を打診したが実現せず、陳建仁・元副総統を特使として派遣した。バチカンが中国に配慮したとみられている。

 国際社会からは新教皇誕生に祝意が相次いだ。

 欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長とコスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)は8日の共同声明で「教皇が国際舞台で声を上げ、より公正で慈悲深い世界の実現に向けて団結を促してくれると信じている」と期待を寄せた。

 イタリアのメローニ首相は8日、Xへの投稿で「紛争と不安が渦巻くこの時代に教皇が語った言葉は、平和、友愛、そして責任への力強い呼びかけである」とたたえた。

 国連のグテレス事務総長は8日の声明で新教皇選出は「世界が大きな課題に直面する時代において、多数の信徒に深い精神的意義をもたらす」と述べ、国連とバチカンとの協力を一層深めたいとした。【北京・河津啓介、台北・林哲平、ブリュッセル岡大介、ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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