韓国大統領選 李在明氏が当選確実 3年ぶり進歩勢力が政権奪還

2025/06/03 23:41 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 韓国の大統領選は3日投開票され、進歩系の「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前代表(61)が保守系の「国民の力」から出馬した金文洙(キム・ムンス)前雇用労働相(73)らを破り、当選を確実にした。KBSなど3大放送局が相次いで伝えた。2022年に文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領を退任して以来、約3年ぶりに進歩勢力が政権を奪還した。李在明政権は4日に発足する。

 今回は、戒厳令を宣布した保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領が憲法裁判所に罷免されたことに伴う選挙。政権与党となる共に民主党は国会(定数300)で過半数を大きく上回る議席があり、李氏は盤石な体制で政権を始動させる。

 李氏は弁護士出身。ソウル郊外の京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市長や京畿道知事などを経て、22年の前回大統領選でも共に民主党から出馬したが、尹氏に僅差で敗れた。その後、約3年にわたり党代表を務めて党内基盤を固め、雪辱を期して今回の大統領選に臨んだ。

 李氏は選挙戦で、戒厳令を宣布した尹氏らを「内乱勢力」と位置づけ、その「断罪」を強く訴えた。共に民主党の支持層に加え、尹氏の弾劾・罷免に賛成した中道層にも支持を拡大。選挙期間中、一貫して優位な戦いを展開した。

 国民の力は4月上旬に尹氏が大統領職を罷免され、不利な状況での短期決戦を強いられた。金氏は、尹氏の弾劾・罷免に反対した保守強硬派で、選挙戦の最終盤まで戒厳令を巡って釈明に追われた。

 党自体も、尹氏の弾劾への賛否を巡り対立した後遺症から脱することができず、一体感を欠いた選挙戦となった。保守系野党の「改革新党」から出馬した国会議員、李俊錫(イ・ジュンソク)氏(40)との一本化交渉が不調に終わり、保守票が分散したことも痛手となった。

 李在明氏は選挙戦で、外交政策について「米韓同盟を土台にした国益中心の実用外交」を掲げ、日米韓協力の重要性を訴えた。対日政策では、過去に日本に対して強硬な発言をしたことで知られるが、最近は日韓の協力を重視すると強調してきた。日韓関係は尹前政権の時代に改善したが、李在明政権発足後、これまでの改善基調がそのまま続くかどうかについて日本側には懸念もある。ただ、韓国は昨年12月に尹氏が弾劾訴追されて以降、大統領代行体制が約半年続いた。李在明氏には、関税問題を含む対米外交など取り組むべき喫緊の課題が山積している。

 一方、李在明氏は、前回大統領選での公職選挙法違反事件や、城南市長時代の都市開発事業を巡る背任事件など五つの刑事裁判を抱えている。大統領には内乱罪と外患罪を除き不訴追特権があるが、大統領就任前に起訴された事件の裁判が継続するかどうかについては明確な規定がない。

 共に民主党は、被告が大統領に当選した場合には刑事裁判の手続きが停止されるとの規定を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を国会に提出した。これについて国民の力は「三権分立を踏みにじる独裁だ」などと強く反発しており、李在明氏はこうした「司法リスク」を巡って野党や世論への対応も迫られる。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

国際

国際一覧>

写真ニュース