ドローンは「すべて迎撃」 応酬続く恐れも イスラエルがイラン攻撃

2025/06/13 20:47 

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 イスラエルのネタニヤフ首相は13日、イラン国内の核施設や弾道ミサイル開発の拠点などを攻撃したと明らかにした。イスラエル軍によると、イランは同日、イスラエルに向けて100機以上の無人航空機(ドローン)を発射し、報復攻撃を行った。イスラエル軍はすべて領空外で迎撃したとしているが、今後も応酬が続く可能性があり、大規模な衝突に発展する恐れもはらんでいる。

 イランメディアなどによると、イランでは13日未明、首都テヘランや中部ナタンツなどで爆発が相次いだ。イラン最高指導者直轄の精鋭軍事組織・イラン革命防衛隊トップのサラミ司令官やイラン軍のバゲリ参謀総長など幹部少なくとも20人と、核開発に関わる科学者6人が死亡した。テヘラン州だけで78人が死亡、329人が負傷したとの報道もある。

 イラン原子力庁によると、ウラン濃縮施設があるナタンツも攻撃され、核施設内で放射能汚染が確認された。ただ、外部には漏れておらず、被害も「表面的な損傷」にとどまったとしている。中部イスファハンやフォルドゥの核施設、南西部のブシェール原発は攻撃を受けなかったという。

 イスラエル軍は、戦闘機200機以上が空爆に参加し、100カ所を超える標的を攻撃したと発表。イランの防空網に対して「大規模な攻撃」を実施したことも明らかにした。

 イランメディアは、テヘラン市内の複数の場所から大きな煙が上がる様子や、集合住宅の一室が破壊された様子などを報じた。複数の女性や子供が死亡したとの報道もある。テヘランのイラン革命防衛隊の本部も攻撃を受けたほか、北西部タブリーズや西部ケルマンシャーなどでも爆発があった。

 ネタニヤフ氏は13日の演説で、イランの核・ミサイル開発計画の「中心」を攻撃したとし、「イスラエルの歴史上、決定的な瞬間だ」と強調した。イスラエル軍は、イランが秘密裏に核兵器に必要な部品を開発しており「引き返せない地点」に向かいつつあったと主張し、攻撃を正当化した。カッツ国防相は空爆後、イランの報復に備え全土に緊急事態を宣言した。

 一方、ルビオ米国務長官は声明で、今回の攻撃はイスラエルの「単独攻撃」で、「米国は関与していない」と強調した。イスラエルは「自衛のために必要な行動だ」と米国に説明したという。

 米国はイスラエルの後ろ盾だが、今回の攻撃への賛否には言及せず、一定の距離をとる姿勢を示した。イランが報復として中東の米軍拠点を狙う可能性もあるため、ルビオ氏は「イランは米国の拠点や人員を標的にすべきではない」と警告した。

 空爆を受け、イラン最高指導者ハメネイ師は「イスラエルは厳しい罰を受ける」と報復を宣言。数時間後にはイスラエルに対しドローン攻撃を実施した。イスラエルメディアによると、ドローンはすべて迎撃され、イスラエル側に被害はなかった。イスラエル軍は自国を狙っていた弾道ミサイルもイラン国内で破壊したとしている。

 イランの核開発を巡っては、トランプ米政権が4月以降、断続的に交渉を行ってきた。米国は核兵器保有を容認しない姿勢を強く示していたが、イランの核開発制限と引き換えに、対イラン制裁が解除される可能性があるとみられてきた。15日にも仲介国オマーンで6回目の協議が開かれる予定だったが、今回の攻撃を受け、交渉の行方は不透明になった。

 一方、国際原子力機関(IAEA)理事会は12日、イランが保障措置(査察)協定に違反しているとして非難決議を採択。イランは強く反発し、新たにウラン濃縮施設を稼働させると表明していた。トランプ米大統領は13日、ソーシャルメディアで「イランは(さらなる攻撃で)何もなくなる前に、ディール(取引)を成立させなければならない」と投稿し、改めて交渉に意欲を見せた。

 石破茂首相は13日、イスラエルのイラン攻撃について「到底容認できない。極めて遺憾であり、日本国として強く批判する」と述べた。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地、ワシントン松井聡】

毎日新聞

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