イスラエルと戦うハマスとは なぜ支持を集め、なぜ孤立するのか

2025/07/06 09:02 

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 2023年10月、ハマスの戦闘員がイスラエルに越境攻撃を仕掛け、民間人ら約1200人が殺害された。あの奇襲から始まった戦争はいまも続く。中東を揺るがすハマスとは、いったいどんな組織なのか――。

 ハマスが誕生したのは1987年。イスラエルの占領政策に対し、パレスチナ人が投石などで抵抗の意思を示した「第1次インティファーダ(民衆蜂起)」のさなかだった。

 母体となったのは、隣国エジプトのイスラム組織「ムスリム同胞団」のパレスチナ支部。組織名は、アラビア語で「イスラム抵抗運動」を意味する。イスラエルの存在を認めず、パレスチナ全土の「解放」とイスラム国家の樹立を掲げてきた。

 もともとパレスチナ自治区ガザ地区では、穏健派のパレスチナ解放機構(PLO)が主導権を握っていた。ところが、06年の評議会選挙でハマスが圧勝。PLO主流派のファタハと統一政府を組んだものの、翌年には対立が激化し、ハマスがガザを武力で制圧した。

 以降、ガザ地区はハマス、飛び地のヨルダン川西岸地区はファタハ主導の自治政府が統治するという分断状態が続いている。

 ハマスは政治部門と軍事部門を持ち、戦闘員は1万5000~2万5000人に上るという。90年代から00年代前半にかけては、イスラエル市民を狙った自爆テロを繰り返し、米国や欧州、日本からテロ組織に指定された。

 一方で、貧困層への支援にも力を入れてきた。学校や病院、宗教施設の運営などを通じて地域に根を張り、一定の支持を得てきた。

 支援国はトルコやカタールなどで、イスラエルと敵対するイランが最大の後ろ盾として支える。イランの最高指導者ハメネイ師は、今年2月に面会したハマス幹部を「シオニスト政権(イスラエル)を打ち負かした」と称賛した。

 ただ、度重なるイスラエルとの衝突で、ガザの市民は甚大な犠牲を強いられてきた。23年10月に始まった戦闘では、ガザ側の死者が5万7000人を超えた。空爆や封鎖により人道危機が深刻化し、ガザ内部ではハマスに対する抗議の声も上がっている。

 イスラエル軍による幹部の殺害が相次ぎ、組織力は大幅にそがれているとされる。それでも、イスラエルや米国が描く「ハマス抜き」の戦後統治構想は現実味を欠いたままで、代わりとなる勢力も見えてこない。【飯田憲】

毎日新聞

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