エチオピアで巨大ダム完成 ナイル川下流のエジプトなどとの紛争火種

2025/09/10 18:36 

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 エチオピア政府がナイル川上流で建設してきたアフリカ最大規模の「大エチオピア・ルネサンスダム」(GERD)が完成し、正式運用が始まった。ロイター通信などが報じた。下流に位置するエジプトやスーダンは、このダムが水不足を引き起こす恐れがあると批判しており、紛争の火種となる恐れをはらんでいる。

 世界最長のナイル川は、エチオピア高原に水源を持つ「青ナイル」と、ビクトリア湖周辺の高原地帯から流れるとされる「白ナイル」がスーダンで合流し、エジプトに流れ込む。

 GERDは青ナイルに建設され、最大貯水量は青ナイルの平均年間流水量の約1・5倍の740億立方メートルに及ぶ。エチオピアは2011年から工事を本格化させ、20年からは雨期に段階的な貯水を実施していた。

 報道によると、22年に水力発電の稼働が開始され、9日には発電量が最大の5150メガワットに達した。この日の完工式では、エチオピアのアビー首相がエジプトとスーダンに向けて「ダムを造ったのは、地域全体の繁栄と電力供給、そして黒人の歴史を変えるためだ」と呼びかけた。発電した電力の一部は輸出する考えも示した。

 一方、エジプト外務省は9日、国連安全保障理事会に送付した書簡で、ダムの建設は「国際法違反」であり「エチオピアが一方的に水資源を支配するのを許すわけにはいかない。エジプトは国民の存亡に関わる利益を守るため、あらゆる措置を講じる権利を持つ」と主張した。

 エジプトは国土のほとんどが砂漠で、水需要の大半をナイル川に依存している。このため、スーダンと共にエチオピアと協議を繰り返してきたが、溝は埋まっていない。エジプトとスーダンは3日発表の共同声明でも、GERD建設は流域国に「継続的な脅威」をもたらすと非難していた。

 中東では今年、各地で干ばつが深刻化している。エジプトやスーダンでも今後、水資源が不足すれば、エチオピアとの間で緊張が高まる可能性がある。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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