ハリス前副大統領、新著で「身内」酷評 米民主党に困惑広がる

2025/09/24 18:00 

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 昨年の米大統領選で敗れたハリス前副大統領(60)の回顧録「107日」が、野党・民主党内で波紋を広げている。23日に出版され、バイデン前大統領や副大統領候補として名前が浮上した党有力者らを酷評しているためだ。民主党は大統領選後の党勢回復の糸口をつかめておらず、混迷を加速させるとの見方が出ている。

 ◇選挙戦の内幕

 新著はバイデン氏の選挙戦撤退を受けて急きょ党の大統領候補となってから、共和党のトランプ氏に敗れるまで3カ月あまりの選挙戦の内幕を明かしている。

 ハリス氏は副大統領候補の選定について、「親しい友人」でもあるブティジェッジ運輸長官(当時)が最有力だったと振り返った。ただ黒人女性の自身と、同性愛者を公表しているブティジェッジ氏の組み合わせは「リスクが大きすぎる」と判断したという。「私がストレート(異性愛者)の白人男性だったら理想的なパートナーだった」

 また東部ペンシルベニア州知事で高い人気を誇るシャピロ氏について「ナンバー2の役割では満足できない」として副大統領候補からは外したという。

 実際に副大統領候補に選んだウォルズ・ミネソタ州知事は温厚な人柄だった。しかし副大統領候補によるテレビ討論会では、攻撃的なレトリックを控えて融和的な態度を取った共和党のバンス候補に対し、うなずいて笑顔を見せるなどしてしまい、「偽りにはまってしまった」と悔やんだ。

 ニューサム・カリフォルニア州知事やプリツカー・イリノイ州知事、ウィットマー・ミシガン州知事が自身の出馬表明後、直ちに支持を表明しなかったことにも不満をにじませた。

 ◇バイデン氏への思いは

 昨年9月のトランプ氏とのテレビ討論会の直前、バイデン氏から電話がかかってきたという。ただバイデン氏は、選挙戦撤退につながった6月の討論会で「トランプ氏に勝った」と主張するなど自身の話に終始した。「なぜこの瞬間に電話で自分のことばかり話すのか理解できなかった。気が散った」

 さらにバイデン氏の再選出馬は「無謀だった」と振り返り、短期間の選挙戦で有権者への浸透を図れなかったことを最大の敗因に挙げた。

 一方、出版に先駆けて新著の抜粋が報道されると、名指しされた当事者たちからは異論が相次いだ。

 ブティジェッジ氏は政治メディア「ポリティコ」に対して18日、「驚いた」と感想を述べた上で「政治家は(属性の)カテゴリーではなく、国民のために何ができるかで支持を得られる。国民を信頼するべきだ」と指摘した。

 またシャピロ氏の報道担当者は「知事はトランプ氏に勝つことに専念していた。それ以外の主張はばかげている」と反論した。民主党関係者は議会専門紙ヒルに対し「最悪なタイミングで、傷口に塩を塗るようなものだ」と嘆き、「党内抗争でも始めるつもりか」といぶかしんだ。

 ◇次回大統領選への対応は

 23日にABCテレビの番組に出演したハリス氏は、新著が党内に亀裂をもたらすとの懸念に対し「それは私の本意ではない」と反論。「民主党はスターぞろいだ」と釈明した。2028年の大統領選への出馬については「今は全く考えていない」と述べた。【ワシントン金寿英】

毎日新聞

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