サルコジ元仏大統領収監へ 禁錮5年判決 リビア不正資金巡り

2025/09/26 12:02 

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 パリの裁判所は25日、2007年の大統領選で当選したニコラ・サルコジ元大統領(70)が選挙前の05~07年、側近2人を通じ、リビアのカダフィ政権に不正な選挙資金の提供を求めていたとして、禁錮5年の判決を言い渡した。サルコジ被告は戦後の第5共和制の大統領経験者として初めて収監される見通しとなった。

 判決によると、サルコジ被告は内相だった05年、側近で元閣僚のクロード・ゲアン、ブリス・オルトフー両被告を通じ、欧州諸国との関係改善を模索していたカダフィ大佐の側近で、情報機関トップだったアブドラ・セヌーシ氏と複数回接触。被告らはサルコジ被告の大統領就任後、フランスがリビアを支援することを約束し、巨額の選挙資金を受け取ろうとした。

 裁判所は、ゲアン被告に禁錮6年、オルトフー被告に禁錮2年の判決を言い渡した。ゲアン被告は健康上の理由で収監が見送られ、オルトフー被告も収監されず、電子装置による監視下に置かれる。

 裁判所はリビアからの資金をサルコジ被告が受け取った証拠は得られなかったが、不正な計画が立証されたことで犯罪要件を満たしたと説明。「大統領選出のために汚職を図った事実は極めて重大で、国民の公職に対する信頼を損なう」と断じた。サルコジ被告は仏メディアに「私は無罪で、この不公平な判決は恥ずべきものだ」と反論し、控訴する意向を示した。

 07年の大統領選では、右派「国民運動連合」(現共和党)のサルコジ被告が、左派・社会党のロワイヤル候補を降して当選した。

 サルコジ被告は大統領就任後、カダフィ大佐をパリに招き、武器売却などで合意した。しかし11年2月、カダフィ政権が反体制運動を弾圧したのを機に批判を強め、国連安保理決議に基づくリビア空爆を主導した。カダフィ大佐は11年10月、北大西洋条約機構(NATO)の爆撃で追い詰められ、逃亡中に反体制派に拘束されて殺害された。

 資金提供疑惑は11年3月、カダフィ大佐の次男セイフイスラム氏が欧州のニュース専門テレビ局「ユーロニュース」のインタビューで「サルコジ氏は大統領選に向けリビアから受け取った資金を返還すべきだ」と訴えたことなどから発覚した。

 だが、金銭授受の証拠集めは難航した。リビアからサルコジ被告側への資金提供をノートに記録していたとみられるリビアの元石油相は12年4月、ウィーンのドナウ川で溺死した。オーストリアの裁判所は心臓発作による事故死と結論づけたが、事件性を疑う見方もある。

 16年にはリビア、フランス両政府の仲介役を務めたとみられるフランス系レバノン人実業家ジアド・タキエディン氏が、仏メディア「メディアパート」の取材に「現金を詰めた複数のスーツケースをリビアの首都トリポリから仏内務省まで運んだ」と証言。

 ルモンド紙によると、同氏は捜査当局にも、06年と07年にサルコジ被告とゲアン被告にあてた計500万ユーロ(約8億7500万円)の現金入りスーツケース3個を移送したと認めたが、20年に証言を撤回している。

 捜査当局は、サルコジ被告側がタキエディン氏に圧力をかけたとして、別途サルコジ被告らを聴取した。タキエディン氏は今月23日、ベイルートで死亡した。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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