トランプ氏、ガザ巡る和平会議で「成果」発信 中東諸国と温度差も
エジプトで13日に開かれたパレスチナ自治区ガザ地区を巡る和平会議は、トランプ米大統領の「成果」を発信する色合いが濃いものとなった。20カ国以上の首脳らが集まり、和平合意の妥結を祝ったが、今後のガザ、そして中東の安定化に向けた道筋は明らかになっていない。
「この偉大な大統領を来年のノーベル平和賞に推薦する」。和平会議で壇上に立ったパキスタンのシャリフ首相は、横にいるトランプ氏を指し、こう宣言した。
この日の会議には英仏独の首脳や国連のグテレス事務総長、パレスチナ自治政府のアッバス議長らが参加した。
ガザを巡る各国の結束を打ち出す一方、トランプ氏を中心に他の首脳らが脇や後ろを固める姿は、「平和の構築者」としてのトランプ氏の存在感を高める演出のように見える。
トランプ氏が約2年間続いた戦闘を巡り、イスラエルに圧力をかけた上、アラブ諸国などの協力も得て人質の解放や停戦を実現したことは一定の成果だ。来年のノーベル平和賞だけでなく、米国内に向けてもアピール材料となる。
とりわけ戦闘の継続を望んでいたイスラエルのネタニヤフ首相を説得したことは、バイデン前政権ではできなかった難題だった。
ただ、トランプ氏の和平案は「人質の解放と停戦」を、難航が予想される「ハマスの武装解除と恒久的な和平」と切り離して、取り急ぎ前者だけ成立させたものだ。13日の和平会議ではこうした「本丸」の問題を議論するとみられていた。
しかし、壇上でスピーチしたのは共同議長を務めるエジプトのシシ大統領とトランプ氏のほか、シャリフ氏1人だけ。その後に非公開で行われた会議も短時間で閉幕した。ガザの復興やイスラエル軍の完全撤退に向けた道筋は発表されていない。
2023年10月のガザでの戦闘開始を契機に、中東の勢力図は一変した。イランからイラク、シリアを経てレバノンに至る「(イスラム教)シーア派の三日月地帯」と呼ばれたイランの勢力圏は、イスラエルの攻撃や、イランに近いシリアのアサド政権の崩壊で大きく弱体化した。
「すべての勢いは、偉大で素晴らしい永続的な平和に向かっている」「ガザはもう言い訳にならない」――。トランプ氏は会議で、ガザの停戦を足がかりに、第1次トランプ政権が仲介し、アラブ首長国連邦(UAE)などアラブ4カ国とイスラエルが関係を正常化させた、20年の「アブラハム合意」拡大を目指す意向を鮮明にした。
だが、ガザの人道危機を受け、アラブ諸国ではイスラエルへの敵意が増幅しており、すぐに関係改善に乗り出すのはリスクが大きい。この日の会議でも、サウジアラビアは首相を務めるムハンマド皇太子ではなくファイサル外相が参加し、温度差をにじませた。
トランプ氏は、エジプトに先立って訪れたイスラエル国会での演説では「イランにさえも友好の手は差し伸べられている」とも語り、イスラエルにとって最大の敵国であるイランとの関係改善にも意欲を示した。
イスラエルと米国は6月、イランの核施設を空爆しており、イランの核開発を巡る米国との交渉も停止している。トランプ氏は「イランはディール(取引)したがっている」と主張したが、イラン側の不信感は根強い。
イランのアラグチ外相はX(ツイッター)で、米国を念頭に「イラン国民を攻撃し、脅しや制裁を続ける相手に関与できない」と投稿し、13日の和平会議への参加を見送っている。
トランプ氏は今回の中東訪問中、先行きに楽観的な見方を繰り返し、「(ガザ)戦争は終わった」と述べている。次の目標として、ロシアとウクライナの戦争終結に意欲を示す。
トランプ氏はガザでの戦闘再燃は避けたいとみられる一方で、「人質の解放と停戦」を実現し、既に自身にとって成果を手にしている。
紆余(うよ)曲折が想定される和平案履行に向け、米政権がどの程度根気強く、本腰で関与していくのかが、今後の焦点になりそうだ。【シャルムエルシェイク金子淳、ワシントン松井聡】
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