7分で155億円被害 仏ルーブル美術館強盗、周到な手口が判明

2025/10/22 19:52 

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 フランス・パリのルーブル美術館で19日に起きた宝飾品強盗事件で、パリ検察当局は21日、推定被害額が8800万ユーロ(約155億円)に上ることを明らかにした。また捜査の結果、犯行グループの周到な手口の全容も判明した。犯行時間はわずか約7分だったという。パリ検察のベキュオ検察官が21日、仏ラジオのインタビューで答えた。

 検察当局によると、ルーブル美術館で奪われたのは、19世紀の王族らのネックレスやイヤリングなど計8点で、ナポレオン3世妃(ウージェニー皇后)のブローチなどが含まれていた。ルーブル美術館の学芸員が被害額を8800万ユーロと推定した。犯行グループは8点のほか、ウージェニー皇后の王冠も持ち去ろうとしたが、逃走時に路上に落とした。王冠には1354個のダイヤモンドや56個のエメラルドなどがちりばめられており、一部が損傷した。

 検察当局によると、実行犯は4人で、高所作業用のはしごを積んだトラックとオートバイにそれぞれ分乗し、19日午前9時半ごろに犯行現場となった建物の前に到着した。黄色とオレンジ色の作業用ベストを着用した2人が工事現場用のオレンジ色のコーンを路上に置いて周囲を封鎖する一方で、ほかの2人がトラック荷台に設置された伸縮式のはしごで建物2階のバルコニーに上り、電動のこぎりで窓を割って侵入したという。

 約5分後には侵入した2人が電動のこぎりで「アポロンのギャラリー」にある二つの展示ケースを破り、9点の宝飾品を奪取。現場に駆け付けた複数の警備員を電動のこぎりで威嚇し、侵入時に使ったはしごで窓から館外に脱出した。外で合流した4人はオートバイ2台に分かれて逃走し、この時にウージェニー皇后の王冠を路上に落とした。

 検察当局によると、事件当時に美術館内の警報装置が作動したことは確認されたが、アポロンのギャラリー付近で実際に警報音が鳴ったかや、警備員が警報音を実際に聞いたかは確認できていないという。一方、現場には、はしごを積んだトラックや電動のこぎり2台、ヘルメット、バーナー、ガソリン、手袋、無線機、毛布が残されていた。トラックは引っ越し作業を装って業者から借りたものだった。

 検察当局は100人態勢で捜査を進めているが、犯行グループの特定には至っていない。今後、遺留品のDNA型鑑定などを急ぐとみられる。検察当局は、実行犯4人の背後に大規模な犯罪組織が存在する可能性も示唆している。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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