トランプ氏、サウジにF35売却へ 中東の軍事バランスに影響か

2025/11/18 10:47 

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 トランプ米大統領は17日、F35ステルス戦闘機をサウジアラビアに売却する意向を示した。米国はこれまで中東ではイスラエルのみに売却し、周辺国に対するイスラエルの軍事的優位性を維持させてきた。売却すれば、米国の大きな政策転換となり、中東の軍事バランスに影響するとみられる。一方で、サウジを通じて中国への技術漏えいを懸念する声も上がっている。

 トランプ氏は18日にホワイトハウスでサウジの事実上の最高実力者のムハンマド皇太子と会談する。ムハンマド氏の訪米は7年半ぶり。F35の売却のほか、防衛協力協定なども議題となる見通しだ。

 F35はレーダーで捉えにくいステルス性に優れた最新鋭戦闘機で、米国のほか、日本や英国なども運用している。ロイター通信によると、サウジ側は最大で48機のF35の売却を求めており、数十億ドル(数千億円)規模の取引となる可能性がある。トランプ氏は17日、記者団に「我々はF35を売却する」と語った。

 一方、F35の売却を懸念する声も上がっている。第1次トランプ政権は2020年、アラブ首長国連邦(UAE)に対してF35を売却することを承認した。だが、バイデン前政権が中国への技術漏えいを懸念し、UAE側に漏えいを防ぐための厳格な措置を求めたことなどで協議が頓挫した経緯がある。

 サウジは多角的な外交を志向し、中国やロシアとの関係も重視してきた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、サウジは軍事面でも中国と一定の協力関係にあり、F35の売却を巡っても、米国防総省内でサウジから中国への技術漏えいを懸念する声が上がっている。

 また、米ニュースサイト「アクシオス」によると、イスラエルも、イスラエルとサウジの国交正常化を売却の条件とするよう求めている。トランプ政権はイスラエルと一部のアラブ諸国が20年に国交正常化した「アブラハム合意」へのサウジの参加を目指してきた。

 ただ、サウジ側はイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を重視しており、イスラエル側と隔たりがある。イスラエル当局者はアクシオスに対して、「米国がサウジから外交的な見返りを得ずに、F35を売却するのは間違いだ」と語った。

 米国とサウジは長年、米側が安全保障を提供する見返りに、サウジが原油を輸出してきた。だが、近年は米国内でのシェールガス・オイルの生産でサウジの重要度は下がった。また、18年にはトルコのサウジ総領事館で反体制派ジャーナリストのカショギ氏が殺害される事件があり、人権を重視するバイデン前米政権との関係が悪化した。

 ただ、トランプ氏は人権への関心が薄いとされ、サウジとの関係強化に動いている。2期目で事実上初めての外遊として5月にサウジを訪問し、6000億ドルの対米投資で合意した。また、米メディアによると、トランプ氏一族の企業「トランプ・オーガニゼーション」がサウジで開発事業を進めており、「公私混同」との批判が出ている。【ワシントン松井聡】

毎日新聞

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