両者の主張は「平行線」 日中局長級協議 日本は首相答弁撤回せず

2025/11/18 20:20 

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 外務省の金井正彰アジア大洋州局長は18日、北京で中国外務省の劉勁松(りゅうけいしょう)アジア局長と数時間にわたって協議した。高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁について、従来の日本の立場を変えるものではないと説明し、撤回しない考えを伝えた。劉氏は首相答弁の撤回を改めて要求。両者の主張は平行線をたどった。

 金井氏は協議で、中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事が首相答弁を巡って「汚い首は斬ってやる」などとX(ツイッター)に投稿したことに対し、改めて強く抗議し、早急に適切な対応をとるよう中国側に求めた。中国当局が発表している日本への渡航自粛などの呼びかけについては「日本国内の治安は決して悪化などしていない」と反論し、中国側が適切な対応をとるよう要求。在留邦人の安全確保についても併せて申し入れた。

 中国外務省の毛寧報道局長は記者会見で、劉氏が協議で首相答弁について「厳正な申し入れ」を行い、抗議したと明らかにした。劉氏は、首相答弁が台湾を中国の一部とする「一つの中国」原則や、1972年の日中共同声明など日中間で交わした四つの政治文書の精神に反すると主張。「中日関係の政治的基礎を根本的に損なうもので、中国国民の怒りや非難を招いている」などと訴えたという。

 毛氏は会見で「日本側は誤った発言を撤回し、具体的な行動をもって誤りを認め偏向を正し、政治的基礎を守るよう求める」と強調した。

 一方、木原稔官房長官は会見で、首相答弁は「従来の政府の立場を変えるものではない」として撤回しない方針を改めて示した。中国側は、今月下旬に南アフリカで開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて李強首相と高市首相が会談する予定はないとしているが、木原氏は「日中間のさまざまな対話を行うことについて日本側はオープンだ」と述べた。

 茂木敏充外相は会見で、日本への渡航自粛の呼びかけなどの中国側の対応について「2国間の人的交流を萎縮させるような中国側の発表は、両首脳で確認した大きな方向性と相いれない」と指摘。日中間の人的交流に影響が出ていることについては「懸案や意見の相違があるからこそ、幅広い分野で、官民双方の重層的な意思疎通を図ることが重要だ」と強調した。【田所柳子、畠山嵩、北京・畠山哲郎】

毎日新聞

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