気候変動に「断固」対応 米国抜きのG20首脳宣言、足並み乱れあらわ

2025/11/23 20:33 

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 南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれていた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は23日閉幕した。

 加盟国は22日、南アの「人権侵害」を理由にボイコットした米国抜きで首脳宣言を採択し、気候変動や低所得国の対外債務問題の解決などに向けて協力することを確認した。

 ただ、米国は反発を強めているほか、トランプ政権に近いアルゼンチンも首脳宣言を「支持できない」と語り、加盟国間の足並みの乱れがあらわになった。

 サミットは2日間の日程で開かれ、気候変動や災害対策、AI(人工知能)、アフリカへの支援体制などを協議した。米国は首脳宣言より格下の議長声明のみ容認する意向で、南アが重視する気候変動などに言及することも反対していた。

 だが、首脳宣言は気候変動問題に「断固として」取り組むことを確認し、米国が離脱を表明した気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の重要性も指摘。再生可能エネルギーを世界で3倍に増やす取り組みを「支持する」とした。

 ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘については、国連憲章に基づき「公正で包括的かつ永続的な平和に向けて取り組む」と述べた。

 昨年の首脳宣言では、ウクライナ侵攻の世界経済などへの「悪影響」や、パレスチナ国家独立による「2国家解決」への支持が盛り込まれていた。今回は、加盟国であるロシアや親イスラエルのインドなどに配慮し、宣言文の採択を優先した可能性がある。

 ただ、アルゼンチンのキルノ外相は22日の会議で「地政学的な問題のとらえ方に深い懸念を持っている」として「(首脳宣言を)支持しない」と明言。「我々の意思を正確に反映していない文書」だと述べた。ロイター通信によると、アルゼンチンの代表は最終草案をまとめた21日の会合に欠席したという。

 世界経済を巡っては、首脳宣言では「依然として高い不確実性と複雑な課題に直面しているにもかかわらず、2025年前半は回復力を見せた」と一定評価した上で、「地政学や貿易上の緊張」などが「成長の下振れリスクとなりうる」と指摘した。トランプ政権の高関税政策や、先端技術などを巡る米中対立の激化を念頭に置いたとみられる。

 ハイテク製品の普及で需要が高まるレアアース(希土類)など重要鉱物の供給網(サプライチェーン)強化にも言及した。

 「世界貿易機関(WTO)のルールに沿わない一方的な貿易措置」に対抗する必要性を強調。レアアースの生産や精製で大きな存在感を示す中国が、輸出規制を外交の交渉材料にすることをけん制した形だ。また、アフリカ各国を含む新興・途上国の産地が国際水準の環境ルールのもとで、搾取されずに正当な利益を得られるよう訴えた。

 欧米中銀などが利上げした影響で、深刻化する新興・途上国のドル建て債務の返済負担については「低所得国の利払い費がこの10年で2倍以上に膨らんでいることを懸念する」と明記した。10月のG20財務相・中央銀行総裁会議での閣僚宣言を踏襲し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行と連携しながら対処する方針を改めて示した。【カイロ金子淳、ブリュッセル岡大介】

毎日新聞

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