EU、ロシア産天然ガス輸入全面禁止で大筋合意 パイプライン経由も

2025/12/04 09:59 

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 欧州連合(EU)加盟国と欧州議会の代表は3日、ロシア産天然ガスの輸入を2027年秋までに全面禁止することで大筋合意した。EUは露産液化天然ガス(LNG)の26年末までの輸入禁止を決めているが、パイプライン経由の輸入も禁止する。原油と並ぶロシアの主要な収入源に打撃を与え、ウクライナに侵攻する露軍の戦費を削減するのが狙い。ただ、露産天然ガスに依存するハンガリーやスロバキアは反発しており、実現までに紆余(うよ)曲折も予想される。

 EUのフォンデアライエン欧州委員長は3日、「ロシアの戦争資金を枯渇させることでウクライナと連帯する」との声明を発表した。

 EUは10月、域内企業の露産LNGの輸入について26年末までに禁止することを決めている。EUの行政執行機関である欧州委員会によると、パイプライン経由の露産天然ガスの輸入も27年10月末までに完全停止する。露産原油についても27年末までに全面禁止する方針で、26年前半に具体的な計画を提案する。

 22年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、EUは露産原油、天然ガスの輸入を削減し、ロシアへのエネルギー依存を低減してきた。

 欧州委員会によると、EUの天然ガス輸入に占めるロシア産の割合は、侵攻前の45%から12%に、原油も26%から2%に低下した。

 一方、特にロシアと経済的な結びつきが強いハンガリー、スロバキアでは、エネルギーのロシア依存脱却に向けた動きが鈍く、トランプ米大統領が対露制裁の効果を減殺するとして不満を示していた。

 今回の露産天然ガスの輸入全面禁止は、ウクライナとロシアの和平交渉を主導するトランプ氏の欧州への批判を和らげ、ウクライナ支援の強化に向け、米国との協力を強めたいEU側の思惑があるとみられる。

 だが、ハンガリー、スロバキアは輸入元転換に伴う価格高騰を懸念し、反対の姿勢を強めている。両国は補償を求める構えで、加盟国間の対立が深まる可能性もある。ハンガリーのシーヤールトー外相は3日、「EUの提案を受け入れ、実行することは不可能だ」と述べ、欧州司法裁判所への提訴を示唆。ロイター通信によると、スロバキアも法的手段を検討している。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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