混戦のタイ総選挙 改革派の支持に陰り、次期政権の構図は不透明

2026/01/14 17:23 

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 タイで2月8日に行われる下院総選挙(定数500)は、混戦模様を呈している。2023年5月の前回選以降、首相交代が相次ぎ、連立政権はいずれも短命に終わった。改革派野党の支持に陰りが見られる一方、アヌティン首相の少数与党が勢力を拡大しており、次期政権の構図は見通しにくい。

 「選挙をしても何も変わらない、そんな状況はもう終わりにしたい。国民党が政権を担えば、国が変わる」。最大野党「国民党」のナタポン党首は、11日にバンコクで開いた選挙集会で政権交代を訴えた。会場には約1000人が集まり、約5時間に及ぶ長丁場にもかかわらず、候補者らが説明する公約に耳を傾けた。拍手や歓声が時折上がったものの、前回選で前身政党の「前進党」が得た熱狂ぶりは見られなかった。

 前進党は古い政治体制や既得権益に挑み、若者を中心に支持を集めて最多議席を獲得した。しかし、親軍派や保守派の反発は強く、政権入りは阻まれた。その後、王室への中傷を禁じる不敬罪の改正を公約に掲げたことが違憲とされ、憲法裁判所から解党を命じられた。ピター党首(当時)らには10年間の被選挙権停止が言い渡された。

 こうした経緯から国民党は今回、不敬罪改正などの社会変革よりも経済政策などを前面に出す戦略をとる。集会に参加した公務員の女性(30)は「まず政権を取ることが優先だ」と語った。ただ、「社会を変えてくれると期待していたのでがっかりした」との声も根強く、前進党を支持してきた無党派層の投票行動に影響が出る可能性がある。

 一方、支持を伸ばしているのが、前回選で第3党にとどまった「タイの誇り党」だ。党首のアヌティン氏は昨年9月、4カ月以内の議会解散の約束と引き換えに国民党の支持を取り付け、首相に就任した。ただ、下院での勢力は71議席にとどまり、政権基盤は脆弱(ぜいじゃく)だった。憲法改正を巡る国民党との対立が激化すると、就任からわずか3カ月で解散に踏み切った。

 カンボジアとの国境紛争で強硬姿勢を示したことが追い風となり、国軍兵士をねぎらう姿が好意的に受け止められている。親軍政党が失速する中、保守層の受け皿になりつつある。

 ◇世論調査ではナタポン氏がトップ

 タイ国立開発行政研究院(NIDA)が1月上旬に行った世論調査では、次期首相にふさわしい人物としてナタポン氏が25%でトップを維持し、アヌティン氏が21%で続いた。投票先でも国民党が30%で首位、誇り党が22%で追う。

 一方、タクシン元首相派の「タイ貢献党」は伸び悩む。首相候補のヨッチャナン氏の支持率は10%にとどまった。選挙集会では、党の要職から外れても高い知名度を誇るペートンタン前首相が壇上に立ち、支持を呼びかけている。

 いずれの政党も単独過半数は難しく、選挙後の連立交渉は避けられない。貢献党がキャスチングボートを握るとの見方もある。

 政治学者のサティトーン・タナニティチョット氏は「誇り党は前回選から大幅に議席を伸ばすと自信を深めている。連立交渉の行方は読めず、選挙後も政局は揺れるだろう」と指摘する。【バンコク武内彩】

毎日新聞

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