石破首相、商品券配布「自ら指示」 政権に打撃、与野党から批判

2025/03/14 11:45 

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 石破茂首相が3日夜に首相公邸で開いた自民党衆院1期生との会食に際し、首相事務所が1人10万円分の商品券を配っていた問題で、首相は13日夜、公邸で記者団に「私自身のポケットマネーで用意した」と述べ、自らが指示したことを認めた。議員への商品券配布は「初めてではない」とした上で、政治資金規正法などには抵触しないとの認識を示した。

 首相は14日午前、官邸で記者団に「大勢の方々にご迷惑をかけ、ご心配をおかけしていることは非常に申し訳ない」と述べた。閣議後、閣僚らにも「法には触れていない」と説明した上で「お騒がせして申し訳ない」と陳謝したという。野党は同日の参院予算委員会で追及する構えで、政権への打撃になるのは必至だ。

 関係者によると、首相との会食には自民の1期生15人が出席。会食開始前に首相事務所の関係者が15人の事務所を訪れ、秘書に商品券を渡した。事後に大半が返却したという。

 政治資金規正法は「公職の候補者の政治活動に関して寄付をしてはならない」と定め、政治家個人への寄付を禁止している。

 この点について、首相は「会食のお土産代わりに、ご家族へのねぎらいなどの観点から用意した」として政治活動に関する寄付ではないと主張。自らの選挙区にいる議員への提供はなかったとして、公職選挙法にも抵触しないとの認識を示した。

 過去の商品券提供についても「本当に苦労していただいている皆様、ご家族の方々に対して、これでありがとうという趣旨で渡したことはある」とし、選挙の苦労をねぎらう趣旨だったと述べた。

 一方、政治資金問題に詳しい岩井奉信・日大名誉教授は「外形的に見ると政治家個人に渡しているので、違法性を疑われてもしかたがないのではないか。10万円というのは、社会通念的に土産として通用する話ではない」と疑問視した。

 野党からは批判の声が上がっている。

 立憲民主党の野田佳彦代表は14日の記者会見で、首相が「ポケットマネー」と説明していることを皮肉り、「1人10万円で計150万円なんてポケットに入らない。どうみても政治活動への寄付としか思えない。原資も官房機密費の可能性もある」と指摘。「委員会等の審議で明らかにしていく」と国会で追及する姿勢を見せた。

 日本維新の会の岩谷良平幹事長は「クリーンなイメージの石破首相がこのようなことをしたとすれば、誰がトップでも自民の体質は変わらないことが明らかになった。政治を変えるには政権交代が必要だ」と訴えた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に、自民の裏金事件で首相が一部関係議員を衆院選で非公認としたことなどを踏まえ「(首相が自身について)『法的に問題ない』と言うが、裏金議員に追加処分したことを考えれば、自らへの処分は避けられないのではないか」と指摘した。

 与党からも政権運営への影響を不安視する声が上がった。自民幹部は「石破さんらしくないことをしたものだ」とため息をついた。高額療養費の患者負担増を巡り、首相の判断が二転三転したことに批判が出たばかり。「一難去ってまた一難だ」と頭を抱えた。

 自民党の西田昌司参院議員は14日、「予算を通したら、もう使命を果たしたのだから、退陣されるのが正解だ」と述べ、2025年度当初予算の成立後の首相退陣を要求した。

 7月に参院選を控える中、「クリーンな政治」を掲げる公明党の関係者は「かばいようがない。もう石破さんは立っていられないだろう」と突き放した。【園部仁史、田中裕之、遠藤修平】

毎日新聞

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