米屋だけど売るコメなし 「何カ月も赤字」辞任の江藤農相に憤り

2025/05/21 19:15 

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 「コメは買ったことがない」などと発言した江藤拓農相が、一転して辞任に追い込まれた。茨城県内でもコメ不足や米価の高騰が問題になる中、米穀店や消費者から怒りやあきれの声が噴出した。参院選を控え、自民党内からは影響を懸念する声が出る。【堀井泰孝、鈴木敬子、松室花実】

 「大臣があんな発言をするとは思わなかった。困ったもんだ」

 自民党県連会長の海野透県議は頭を抱える。

 今夏の参院選茨城選挙区には、現職の上月良祐氏(62)が3選を目指し出馬を予定している。県連の選挙対策本部長も務める海野会長は「参院選への影響はないとは言えないが、最小限に食い止めたい」と話した。

 JA全農が落札した備蓄米が十分に行き渡っていないことについて「政府のやり方にも問題があるのかもしれない」と指摘。後任に起用された小泉進次郎・元環境相に対しては「急いで国民に安いコメを届けるように、頑張ってもらうしかない」と注文した。

 県西部の米穀店では「本日の米販売は終了しました」という張り紙を店頭に張りっぱなしだという。50代の男性店主は「ヘラヘラ笑いながら『売るほどあります』なんて、大臣の発言とは思えない。米屋には売るコメがないというのに」と憤る。

 備蓄米も届かず、「もう何カ月も赤字経営だ」という。「国の政策は後手後手。緊張感も責任感もない発言は、日本の食文化が揺らぎかねない現状を認識していない」と語気を強め、怒りは収まらない。

 水戸市内で米穀店を営む男性は「今でも備蓄米が全然入ってこず、去年の秋のお米で何とか対応している。新しい大臣にはスピーディーに流通させるよう取り組んでもらいたい」と話す。

 消費者も困惑顔だ。

 水戸市内のスーパーマーケットに買い物に来ていた女性(69)は「国民が大変な思いをしているのに、人ごとなんだと思った。辞任は当たり前だと思う。冗談でも言ってはいけないことだった」と憤る。

 いつも行く店には2キロのコメと玄米しか売っていなかったという。「年金暮らしで1日の食費を決めて生活しているので、コメの値段がどんどん上がって困っている。新大臣には早く価格が下がるような政策をしてほしい」と願う。

 古河市内の主婦(54)は「一昨年まで5キロで2000円ぐらいだったコメが5000円に値上がりしている。しかも、スーパーの米売り場はすっからかんで、そんな高いコメでも入手が困難」と現状を語る。「発言は庶民感覚からはかけ離れている。もう我慢の限界。『令和の米騒動』は今年も起きそうだ」とため息をついた。

 利根町の農家、斉藤博道さん(55)は「そもそもコメ不足と米価高騰は悪政が原因だ」と指摘する。

 「事実上の減反と農地の集積・集約化で、高齢化した小さなコメ農家は次々に廃業している。そんな状況下でのとんでもない発言には開いた口が塞がらない」

 この2年は温暖化の影響で、主力のコシヒカリの収量は減っており、今年もあまり期待できないという。

 「年間契約のお客さんへ送るコメでさえ、なんとか確保している状況。新大臣を迎えても好転するかどうか」と疑問を投げかけた。

毎日新聞

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