自公立で合意急いだ年金法案 維新と国民置き去りで野党間に溝

2025/06/12 19:36 

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 「基礎年金底上げ策」を付則に盛り込んだ年金制度改革関連法案は12日、参院厚生労働委員会で自民、公明、立憲民主3党などの賛成多数で可決された。13日に開かれる参院本会議で可決・成立する見通し。

 年金制度改革関連法案は、基礎年金の給付水準底上げ案の復活を求めた立憲民主党の主張を、与党が丸のみしたことで成立する見通しとなった。限られた会期内で法案成立を優先させ、自民、公明両党と立憲で合意を急いだ結果、野党間の溝を生じさせた。

 「我々はあんこを入れなかったら将来禍根を残すと思った」。立憲の野田佳彦代表は10日の記者会見で、底上げ策が低年金者対策になる点をあんパンのあんこに例え、法案修正の意義を強調した。今回の修正が、将来的な自公との連立政権との布石となり、内閣不信任案の提出見送りにつながるとの見方に対しては、「理屈が分からない」と語気を強めて反論した。

 一方で、置き去りにされた格好の日本維新の会や国民民主党などは反発を強めた。国民民主の榛葉賀津也幹事長は「(底上げ策は)厚生年金積立金の流用になる。内閣不信任案を出されたくない自民と石破茂首相のまま(参院選を)戦いたいのが立憲だ」と痛烈に批判。終盤国会に向け、政権を追及する機運がそがれ、企業・団体献金規制や選択的夫婦別姓制度を巡る対応などでも野党の足並みは乱れた。

 ただ、水面下では与野党で今後の公的年金制度を検証する協議会を設ける構想が浮上している。自民幹部は「年金制度をチェックする協議会で、維新や国民民主の留飲が下がるかもしれない」と狙いを明かす。立憲の野田氏は、首相在任時に自公とともに消費増税を含む「税と社会保障の一体改革」を主導した経緯があり、立憲幹部は、今回見送りになった国民年金保険料の納付期間を5年延ばす改革案を念頭に「次の改革に向けて地ならしをしたい」と意気込む。

 こうした状況は政府・与党にとって好都合だった。野党が結束すれば可決できる内閣不信任案の提出は見送られる公算が大きくなったためだ。官邸幹部は「少数与党になって迎えた終盤国会で、もっと対決姿勢になると思った」と胸をなで下ろした。【池田直、富美月、竹内望、森口沙織】

毎日新聞

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