実質賃金年1%上昇、初の数値目標 骨太の方針を閣議決定

2025/06/13 18:49 

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 政府は13日、経済財政運営の指針「骨太の方針」を閣議決定した。「賃上げこそが成長戦略の要」と位置付け、2029年度までに物価変動を考慮した実質賃金を、日本全体で年1%程度上昇させることを「ノルム(社会規範)として定着させる」とした。国が算定する公定価格の引き上げなどを通じて、医療や介護分野などの「処遇改善を進める」との方針も示した。

 政府が賃上げの具体的な数値目標を骨太の方針で掲げるのは初めて。政府・日銀は2%の物価安定目標を掲げており、名目では物価上昇を上回る3%の賃上げの実現を目指すことを意味する。

 政府が具体的な目標を設けるのは、賃上げが物価上昇に追いつかない状況が続いているためだ。今春闘の平均賃上げ率は、2年連続で5%超となるなど高水準を維持する見込みだ。一方、厚生労働省が5日公表した4月の毎月勤労統計調査の実質賃金は4カ月連続で前年同月比マイナスとなった。

 こうしたことから骨太の方針では「賃上げ支援の政策総動員」を掲げた。国が発注する事業での価格転嫁などを政府が主導して進めるとしたほか、29年度までに官民で60兆円を投資し、デジタル化などで生産性の向上を図るとした。最低賃金は、20年代に全国平均1500円を目指すと明記した。

 医療や介護、保育、福祉などの公的サービス分野の処遇改善も進める。賃上げが進む民間企業との格差が広がり、人材確保が難しくなっているためだ。ただ、公定価格の引き上げは、原資となる社会保険料の負担増にもつながる。骨太の方針では「保険料負担の抑制努力も継続」としており、どう実現するかが課題となる。

 26年度予算の編成でも、物価上昇への対応を求める。一般会計の歳出の3割超を占める社会保障費について、高齢化による増加分だけでなく、物価上昇による増加分を「加算する」とした。【横山三加子、加藤結花】

毎日新聞

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