衆院選候補者へSNS中傷、対応追われる陣営も 有権者への影響は?

2026/02/02 16:48 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 8日投開票の衆院選で、SNSによる候補者への中傷や偽情報の投稿が相次ぎ、対応に追われる陣営が出てきている。解散から投開票まで戦後最短の16日間の「超短期決戦」が繰り広げられる中、拡散された情報が修正されないまま有権者に伝わることで投票行動に影響が出る恐れもあり、識者が注意を呼びかけている。

 「SNS上で『親中派』などの誹謗(ひぼう)中傷がある。全く根拠のない話だ」。公示日の1月27日、大分県別府市のJR別府駅前。大分3区から立候補した前外相で自民党前職の岩屋毅氏(68)の後援会長は聴衆に訴えた。

 「必ず落選させるべき売国奴」「外患誘致犯」「媚中(びちゅう)」「国賊」――。公示前から岩屋氏へのこうした投稿がSNSで相次いでいることを受けた発言だった。

 きっかけの一つは2024年12月、外相だった岩屋氏が中国人観光客向けの査証(ビザ)発給の緩和を表明したこと。中国が日本人の短期滞在ビザの免除措置を再開したことに応じた措置だったが、「中国寄り」として批判を集めた。

 国旗損壊罪やスパイ防止法への慎重姿勢、大分県日出(ひじ)町で計画されているムスリム墓地建設を巡って地元の要望活動に関わったことも拍車をかけたとみられる。

 岩屋氏側は公示を前に、批判を集めた問題について説明する動画をホームページで公開し、「誤解がある」などと訴えた。岩屋氏は当選10回を重ねるベテランだが、陣営関係者は「これまでにない状況だ。SNSによる選挙への影響が見えず、危機感がある」と漏らす。

 ◇候補者の情報発信に問題も

 一方で、候補者が誤解を招きかねない情報を発信するケースもある。ある政党の新人候補は「外国人犯罪発生率のデータ」として、殺人や強盗の国籍別の検挙人数を示す画像を投稿し、「外国人の犯罪発生率が高い」とSNSに書き込んだ。

 だが警察庁の犯罪統計などによると、犯罪発生率は年齢層によって大きな差があり、相対的に犯罪発生率が高い若年層が多い在留外国人と、全世代を母数とする日本人を単純に比較することはできない。

 衆院選での偽情報や中傷を巡っては、総務相が解散日の1月23日、SNSなどを運営するプラットフォーム事業者に対し、利用規約などに基づく適切な対応を要請した。一方でSNS利用者に対しても、情報をうのみにせず発信源を確認したり、複数の情報を比較したりして真偽を確認すること、そして情報発信時は真偽が不確かな情報や中傷などを不用意に投稿・拡散しないよう呼びかけている。

 福岡工業大の木下健准教授(政治学)は「SNSを通じた情報発信の影響は以前にも増して大きくなっている」と指摘する。

 木下准教授によると、24年の衆院選から動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などで政治について発信する「ショート動画」が増え始め、25年参院選でより一般化した。真偽不明で有権者の不安や怒りなど感情に訴えるものが目立ち、過激な言葉で「炎上」するほど支持や不支持に結びつきやすいという。また、政治家など公的な人物による発信はより影響を与えやすいと警鐘を鳴らす。

 木下准教授は「信頼できる内容かどうか一人一人が冷静にチェックするしかない」とした上で、「感情的な言葉に惑わされるのではなく、主張(投稿内容)と反対の意見を意識して考えることが真偽を確かめることにつながる」と話す。【竹林静、山口泰輝、平川昌範】

毎日新聞

政治

政治一覧>