映画・アニメ業界の取引実態調査へ 多重下請けや低報酬焦点 公取委
公正取引委員会は29日、映画・アニメ業界のクリエーターと製作会社の取引を巡るトラブルについて、実態調査に着手したと発表した。「多重下請け」や「低報酬」など、業界にまん延しているとされる問題点を洗い出すのが狙い。クリエーターに焦点を当てた調査は今回が初めてという。
公取委の藤本哲也事務総長は記者会見で「(映画・アニメ分野は)クリエーターが自由に創作活動し高い付加価値を付ければ、日本の代表的産業になり得る。収益を還元する取引の適正化を進めたい」と述べた。
公取委によると、調査対象はアニメや映画の製作会社のほか、作業を受託するスタジオ、アニメーターといった個人事業主など。公式サイトの専用フォームから情報を募り、関係者へのヒアリングも実施する。公取委は「大手から弱い立場とされる下請けまで、それぞれの視点からの情報を集めたい」としている。
特にアニメ業界は作業の一部委託や再委託が常態化した多重下請け構造があるとされ、製作会社がアニメーターの寄り合い所帯といったケースも少なくない。このため下請けに対する問題行為として、契約書を作らない▽著しく低い報酬で作業を押し付ける▽報酬のないままリテーク(やり直し)依頼を繰り返す▽理由なく発注を取り消す――などが想定されるという。公取委は収集した情報を、独占禁止法や下請け法、フリーランス取引適正化法など、どの法令に違反する恐れがあるか分類し、年内にも報告書を公表する。
公取委は2009年にもアニメ業界の実態調査報告書を公表しているが、当時は製作委員会と製作会社との関係が中心で、クリエーターに焦点を当てた調査は今回が初という。24年には音楽・放送業界の実態調査も行い、タレントが所属事務所から移籍や独立するのを妨げる行為について、独禁法違反(優越的地位の乱用)に当たる恐れがあることなどを指摘した。【渡辺暢】
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