「忘れないで」 能登豪雨で犠牲の中学生の名前、卒業式で読み上げ

2025/03/14 18:12 

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 2024年9月の能登豪雨で亡くなった喜三(きそ)翼音(はのん)さん(当時14歳)が通っていた、石川県輪島市の市立輪島中学校で14日、卒業式があった。卒業生89人の中で喜三さんの名前も読み上げられ、同級生は「一緒に卒業式を迎えたかった」と喜三さんをしのんだ。

 喜三さんのクラスだった3年3組の生徒が入場する番になると、担任の教諭が喜三さんの遺影を手に先頭で進んだ。喜三さんの名前が呼ばれた時には、福光明校長が壇上から受け取り手のない卒業証書を掲げた。

 生徒たちは喜三さんの席に置かれた写真立てを触ったり「ありがとう」「おめでとう」と声をかけたりしていた。

 美術部で喜三さんと一緒だった鶴竹杏菜さん(14)は「翼音がいないことがまだ信じられない。卒業の喜びより、さみしさが大きい。優しい子だった」、同じクラスの東野葉月さん(15)は「席に置かれた写真に『ずっと見守っていてね』と言いたかったけれど、泣きそうでできなかった。もう一度会って話したり歌ったりしたい」と話した。

 喜三さんの父、鷹也さんによると、式の数週間前に学校側から名前を読み上げたいと申し出があった。鷹也さんは「『心を込めて名前を呼びたい』との申し出があり、お願いしますと答えた。翼音のことを忘れないでいてくれたらうれしい」と語った。後日、卒業証書を受け取るという。

 能登豪雨は24年9月21日に起きた。輪島市や隣接する珠洲(すず)市を中心に16人が死亡し、全壊や浸水など住宅の被害は1700棟を超えた。【国本ようこ】

毎日新聞

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