一度は通り過ぎたものの…路上に座り込んだ男性保護 女性に感謝状
広島県警福山北署は、夜間に路上に座り込んでいた80代男性を保護した福山市加茂町のアルバイト、杉本彩華さん(26)に感謝状を贈った。杉本さんは介護職の母親(56)に電話をかけて対応を相談し、署員が来るまで男性を車内で保護した。結城好一署長は「放っておけば事故に巻き込まれたり行方不明になったり、命が失われる危険があった」と功労をたたえた。
2月16日午後9時35分ごろ、友人を迎えに行くため加茂町の市道を軽乗用車で走っていた。センターラインのない幅約5メートルの車道に男性が座っており、前を走っていた車は男性をよけて走り去った。杉本さんも一度は通り過ぎたものの「こんな時間に道に座って認知症かな」と思い、引き返して車の窓を開けて声をかけた。
「大丈夫?」「大丈夫」「こけたん?」「ちょっと転んでしもうて」「歩ける?」「はい、大丈夫です」。男性は立ち上がれなかったため「送ろうか?」と聞いたが、「家は近くだから大丈夫。ありがとう」と言われて窓を閉めて走り始めた。
それでも心配な気持ちが収まらず、再び車を止めて母親に電話し、男性とのやり取りを伝えた。母親は「すぐ戻って家まで送ってあげなさい。拒否されたら警察に通報しなさい」と即答した。
再び戻って声をかけたが、歩き始めた男性は足を止めなかったため、福山北署に通報。気温は7度を切って寒く、男性を説得して車の助手席に座らせて署員の到着を待った。
3日後、男性の家族から杉本さんに電話があった。男性の自宅は発見場所から約10キロ離れており、保護された日は午前中に日課の散歩に出かけたまま帰宅せず、警察犬も出動して探していたという。家族は「数日前に認知症と診断されたばかりだった」と明かし、何度も感謝の言葉を口にした。
同署の属哲雄次長は「あのまま杉本さんが通り過ぎていたら男性は亡くなっていたかもしれない。通報から保護まで適切な対応が一人の命を救った。20代の人が他人に関心を持って手助けしてくれたことがありがたい」と称賛した。
「実家の祖父と同じ世代で話しやすかった」と杉本さん。愛車はスポーツカーだが、あの日はたまたま代車の軽乗用車だったので「助手席に座ってもらいやすかった」と笑い、「恥ずかしいから」とマスクを着けたまま明るく記念撮影に応じた後、さっそうとスポーツカーで署を後にした。【関東晋慈】
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