治勲、新世代の一力本因坊と芝野十段に寄せる期待 本因坊戦第1局

2025/05/14 18:20 

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 一力遼本因坊(27)に芝野虎丸十段(25)が挑戦する第80期本因坊決定戦五番勝負第1局(毎日新聞社主催)が14日、甲府市の常磐ホテルで打たれ、一力本因坊が勝って3連覇へと一歩を踏み出した。

 第1局には、小林光一名誉棋聖(72)らとしのぎを削り、本因坊10連覇を達成したレジェンド、二十五世本因坊治勲(69)=趙治勲九段=が特別ゲストとして招かれた。独特の視点とユーモアを携え、一力本因坊と芝野十段の激突を見守った治勲は、若い2人への期待をにじませた。

 ◇一力の“二刀流” 碁のプラスに

 両対局者を、辛口ながらも愛情深く評価する。

 「碁の才能だけならば、一力よりも井山(裕太王座)、虎丸が上。でも、虎丸が勝つには奇跡が必要」

 2023年の第78期本因坊戦、11連覇中の井山裕太王座(35)に一力本因坊が挑んだ。治勲は「ここで勝てば、しばらく一力時代が続く」と予言していた。その言葉は、現在の囲碁界の勢力図を見事に描き出している。

 一力本因坊を「囲碁だけでない、現代的で優秀な頭脳を持っている」と高く評価し、称賛を惜しまない。

 「一力の努力は尊敬するし、新聞記者、経営者としての“二刀流”もプラスになっているかもしれない。彼の対応能力はすごい」

 ◇芝野の飛躍、みんなの願い

 タイトルへの挑戦が続き、4月に十段を奪取して無冠を脱した芝野十段に対しては、冷静な分析を加える。

 「内容で圧倒しているわけではない。才能を開花させるかは運と努力と才能と、いろんな要素がある。彼自身、悩んでいる時期だと思う。突破して飛躍してほしいと願うのは僕だけでなく、みんなの願いだよね」

 一力本因坊が絶対的なナンバー1の地位を築くのか。それとも芝野十段がその牙城に揺さぶりをかけるのか。今期本因坊戦を重要なシリーズと位置づける。

 「井山よりもひと世代下の2人が競っていってくれれば」。世代交代への期待感をにじませる。

 治勲は終局後、「白(一力本因坊)の完勝と言ってよいのでは。石の方向、流れが完璧だった。AI(人工知能)から見たらどうなのかは分からないが、黒(芝野十段)の石の方向の感じが悪かった」と感想を述べた。

 さらに、「人間だから出来不出来はあるけれど、虎丸の実力はこんなものじゃない。私は虎丸が好きだから『何やっているんだ』と悔しい」と芝野十段に奮起を促した。

【最上聡】

毎日新聞

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