「タワマンの街」武蔵小杉、新たに3棟建設計画 懸念示す住民も

2025/06/04 08:15 

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 「タワーマンションの街」として知られる川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺。住みたい街ランキングで常に上位に入る人気エリアには、約20棟の高層ビルが林立する。今後3棟のタワマン新設が予定され、駅の混雑など懸念の声も上がるが、福田紀彦市長は更なる建設にも前向きだ。

 4月下旬、三菱地所レジデンスなどが日本医科大跡地(中原区小杉町)に建設中の50階建てツインタワーマンション「ザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ」のメディア向け内覧会があった。JR南武線武蔵小杉駅から徒歩3~4分の好立地だ。

 2棟で計1438戸はエリア最大で、2027年9月~28年5月の完成を目指す。他にも武蔵小杉駅前のホテル跡地に、43階建て約500戸のマンション計画があり、29年10月にできる予定だ。3棟で計2000戸弱が新たに供給されることになる。

 武蔵小杉はタワマン(20階建て以上・高さ60メートル以上)と共に人口が急増した。07年に24階建てのマンションが誕生して以来、建設ラッシュに沸いた。川崎市によると、駅北口と南口周辺の人口は、05年に約1万8000人弱だったが、今年3月には4万人弱と、20年で2倍以上になった。

 市は、武蔵小杉駅周辺について、「歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり」を掲げ、再開発を進めてきた。後押しするのが、土地の用途ごとにどれくらいの大きさの建物が建てられるかを定めた「容積率」を緩和する市の政策だ。冒頭の武蔵小杉タワーズは、敷地内に老人福祉施設や公園などを設けることで容積率の大幅な緩和が認められ、約175メートルの高層マンション建設が可能となった。

 福田市長は「単純に高層ビルが良いか悪いかではなく、街のコンセプトに合うかどうかが大事だ」として、今後も条件に合えば建設を容認する考えを示す。他方、横浜市や神戸市のように、条例で市中心部のタワマン建設を事実上禁止する自治体もあるが、川崎市は同様の条例制定には否定的だ。

 懸念を示す住民もいる。タワマン増加に伴う駅の混雑や学校の過密化、高層ビルによる日照被害、強いビル風などが起きているという。「小杉・丸子まちづくりの会」の橋本稔事務局長は「建設反対を訴えても、市は『一部の市民によるもの』と、まともに取り上げない」と指摘する。

 かつては朝の通勤時間帯、駅に入るまでに長い列ができた。改札口を増やしたことや、コロナ禍によるテレワークの普及で混雑は以前よりも緩和されたというが、それでも「3棟ができれば、大混雑するのは目に見えている」と橋本さんは訴える。

 建設中の武蔵小杉タワーズは、担当者によると目安の価格帯は3LDKで1億円~1億8000万円。まだ販売前だが、4月段階で1万件以上の問い合わせがあるという。不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は、「駅近の新築マンションは希少で、都心へのアクセスの良さから人気を集めるだろう」と話す。人口減少の中、武蔵小杉の住民は今後も増え続けそうだ。【葛西大博】

毎日新聞

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