あえて花火のないポスター 混雑、迷惑行為…長岡花火「厳戒」

2025/07/25 06:15 

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 手をつないだ2人の少年と、1人のお年寄りがそれぞれ虚空を見上げる――。新潟県長岡市で8月2、3の両日開かれる「長岡まつり大花火大会」をPRするポスターが話題を呼んでいる。これまでは色とりどりの豪華な花火が描かれてきたが、今年作製されたポスターに花火はなく、「みんなで守る 長岡花火」という文言が添えられている。どうしてこうなったのか。

 長岡花火は日本三大花火の一つに数えられる盛大な花火大会だ。打ち上げ幅が約2キロに及ぶ「復興祈願花火フェニックス」は圧巻で、人口約25万人の市に昨年は全国から観客34万人が来場。コロナ禍前の2019年には過去最多の108万人が訪れた。今年は11年ぶりの土日開催で、チケットの申し込み状況は「昨年の比ではない」(主催者)ほどの勢いで完売。インターネット上ではチケットの高額転売も相次ぎ、大会当日は相当な混雑が予想されている。

 主催する長岡花火財団は県警や警備員、市職員、市民ボランティアなど、警備に当たる人を昨年より100人増やし、延べ4500人態勢で誘導する計画だが、チケットがない人に対しては、テレビやインターネットの動画サイトで楽しんでもらい、来場しないよう呼びかけている。

 ただ、財団が呼びかけても、毎年チケットの抽選に漏れた人が「近くに行けば見えるかも」と来場しているのが実態で、私有地への不法侵入や空き地での大騒ぎ、違法駐車といった迷惑行為が横行しているという。

 そこで、作製したのが花火なしのポスターだ。財団の戸田幸正事務局長は「あれも駄目これも駄目と、個別具体的に課題を指摘するよりも、効果的な手段としてデザインの力に期待した」と明かす。2種類で数十部作製し、首都圏などに掲示しているという。

 戸田事務局長は「万が一、雑踏事故でも起きようものなら来年以降の開催が危ぶまれる。話題となったのは、まさしく僥倖(ぎょうこう)です」と打ち明けた。

 一方で、市民にとっての長岡花火は単なる夏の風物詩ではない。大会は1945年8月1日の長岡空襲の犠牲者に対する慰霊がきっかけで始まった。2004年に発生した中越地震からの復興への思いも込められている。

 今年は長岡空襲から80年であり、フェニックスが始まってから20年の節目。原点回帰の意図もある。そのため、花火のないポスターだけでなく、同市を象徴する長生橋の上空に犠牲者への慰霊を込めた「白菊」が打ち上がる構図のポスターも用意した。

 「今後も安全に長岡花火を続けていくために、皆で考えましょうよ」と戸田事務局長。「日本一マナーの良い花火大会」を目指す。【内藤陽】

毎日新聞

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