架空契約根拠に農地転用 元地権者が私文書偽造容疑で刑事告発 栃木

2025/09/05 17:31 

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 栃木市の社会福祉法人「天成会」(島田耕輔理事長)が架空の土地貸借契約を根拠に農地の転用許可を受け、福祉施設を開設した問題で、元地権者が5日、農地転用の許可申請書に勝手に氏名、住所を記入されたとして、私文書偽造の疑いで栃木署に刑事告発した。告発する相手(被告発人)については「不詳」としている。

 告発人は同市藤岡町赤麻、石川邦雄さん(79)。告発状によると、被告発人は2023年8月23日、同所の農地2筆計984平方メートルを農地法5条1項の規定による許可申請書の当事者の氏名、住所欄に、勝手に石川さんの氏名、住所を記入した。行使を目的に、権利義務にかかわる私文書を偽造したと主張している。

 告発理由の説明によると、現地は22年3月まで、市が石川さんらから借地し、市民農園として利用していた土地で、閉園後の同年5月には、地元の自動車販売・修理会社のグループ会社「チャンプオートグループホールディングス」(佐山和章代表)名で防災、観光拠点の整備構想の説明会が開かれた。その後、グループから土地売買交渉を受け、23年6月30日にグループ傘下のバス会社「ティ・エイチ・エス(THS)」(同社長)と売買契約を結んだ。

 石川さんはこの土地に同グループの観光施設ができると認識していたが、天成会が障害者就労継続支援施設を建設したことに気付き、25年2月に市農業委員会で確認したところ、転用許可申請が天成会を借り主に賃借権を設定するとし、自分と天成会の連名で行われていたことを知った。

 石川さんは、土地はTHSに売却し、天成会に売却、賃貸したことはなく、また、THSあるいは天成会から農転申請時に名前を使用することの承諾を求められたことも、名前の使用を承諾したこともないと主張。「行使の目的で、他人の署名を利用して権利、義務もしくは事実証明に関する文書を偽造」する私文書偽造罪にあたるとし、偽造者を特定し、処罰を求めている。

 この問題を巡っては、石川さんが今年4月、虚偽申請だとして行政不服審査法に基づき、市農業委員会に調査を求めた。その後、農業委から請求趣旨の見直しを求められ、7月に「許可の取り消し」に趣旨を変更したが、審査は進んでいない。【太田穣】

毎日新聞

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