「働き者で温厚な母でした」 被害者の娘が心情語る 町田の女性刺殺

2025/10/02 21:02 

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 東京都町田市のマンションで住人のパート従業員、秋江千津子さん(76)が刺殺された事件で、同居していた40代の娘が2日、報道各社の取材に応じ「実感がわかず、まだ母は戻ってくるんじゃないかと思う」と語った。目の前で母が襲われるのを見たといい「痛かったよね、としか言えない。もうこんな事件は起きてほしくない」と悲痛の心情を明かした。

 秋江さんは9月30日午後7時過ぎ、買い物帰りに自宅マンションの外階段で襲われた。自分の名を叫ぶ声を部屋で聞いた娘があわてて階段を下りると、細身で小柄な見知らぬ男性が秋江さんに馬乗りになって何度も刃物を振り下ろしていたという。「(男性と)目が合って恐怖を感じた。立ち向かえませんでした」

 男性は町田市原町田4の職業不詳、桑野浩太容疑者(40)。警視庁町田署に殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、2日に殺人と銃刀法違反容疑で東京地検立川支部に送検された。「襲いやすそうな人を探した。抵抗されなさそうだと思った」と供述しているという。

 娘によると、秋江さんは数年前に転んで脚を痛めてからも、清掃のパートを続けてきた。「働き者で温厚な母でした」。気さくな人柄と周りに知られ、近所の80代女性は「私の飼い犬をかわいがってくれて、話すと心が和らぐ優しい人だった」と悼む。

 娘は事件直前、スーパーのレジに並んでいた秋江さんから「コーラを買い忘れちゃった」と電話を受け「早く帰ってきた方がいいよ。気をつけてね」と応じた。その数秒の会話が最後のやり取りとなった。「歩くのが遅くて狙われたなら、私がスーパーに行けばよかった」と悔やむ。

 警視庁によると、桑野容疑者は5年前ごろから、現場から約700メートル離れたアパートで暮らしていた。「今の生活が嫌になった。誰でもいいから殺そうと思った」と供述し「配達物が自分にだけ届かなかった」「行政の対応が自分だけ悪い」「自宅前にごみを捨てられた」といった不満を漏らしているという。【松本ゆう雅、菅健吾】

毎日新聞

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