クロワデュノール、悲願の凱旋門賞へ 「マイペースは変わらず」

2025/10/05 12:15 

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 「日本競馬の悲願」に、今年こそ手が届くかもしれない。世界最高峰のGⅠレース・凱旋門賞が日本時間の5日深夜、フランスのパリロンシャン競馬場で開かれる。幾多の名馬がはね返されてきた大舞台に今年挑む3頭の日本馬の中でも期待が集まるのは、ノーザンファーム(北海道安平町)で生産・育成されたクロワデュノールだ。誕生から半年間を過ごした施設の担当者は「もちろん勝ってほしいけど、けがなく無事に帰ってきて」と挑戦を見守っている。

 ◇半世紀以上勝ちなしの凱旋門賞

 今年で104回目となる凱旋門賞には1969年のスピードシンボリを皮切りに、それぞれの時代を代表する日本の一流馬32頭が計35回出走したが、4度の2着が最高成績。日本と異なる深い芝や、例年のようにレース直前の降雨で湿る馬場に苦戦が続き、半世紀以上勝てていない。

 クロワデュノールは3歳の牡馬。今年6月の日本ダービーを制し、同世代7950頭の頂点に立った。血統的にも、父が日本で不良馬場のGⅠも勝ったキタサンブラック、母が欧州で活躍したライジングクロスと、特有の深い芝をこなせる可能性を秘めている。実際、9月には渡仏から間もない完調手前の状態で、本番と同じロンシャン競馬場での前哨戦に勝利した。

 「あんなに遠くまで輸送しても平気な様子で、精神的に成長したなと感じた」

 2022年3月の誕生から半年間、ノーザンファームの繁殖厩舎(きゅうしゃ)長として、平取町の同ファーム施設で成長を見守った田嶋友紀子さん(43)は、前哨戦の印象をそう振り返る。

 ◇おとなしかった子馬が…「本当に強いんだ」

 出産直前は、母の体調に気を使ったことが印象に残っているという。「当時19歳と高齢で、痩せやすい馬でもあった。子を大きく出したいという思いもあったし、出産後の母馬の体調や乳量も考えて、少しずつ餌の量を増やした」

 そのかいあってか生まれた子馬には十分な大きさとしっかりした骨格があった。「性格もおとなしくて賢かった。人の指示をよく聞いて従える。人間との距離感も近すぎず遠すぎず、ちょうど良かった」。ただ、馬体や気性にもっと特徴があるような「他の馬の方が走るかな」とも思ったという。この施設で過ごした半年間はまだ名前がなく、母のライジングクロスから取って「ライ」「ライちゃん」と呼ばれていた。

 ほとんど手がかからなかったクロワデュノールだが、離乳して母と離れると、ストレスからか餌を食べなくなってしまった。「繊細な面もあるんだなと感じた」。獣医師と相談しながら体調を回復させ、同年9月、人を乗せて走るための訓練をする施設に送り出した。

 好内容で勝って一躍評判になった24年6月のデビュー戦は映像で確認したが、2戦目からダービーまでは毎回競馬場に駆け付けた。ダービーのパドックでは、斉藤崇史調教師と北村友一騎手が「すごく自信がありそうな様子だった」と振り返る。1番人気に応えて快勝した姿に「本当に強いんだ」と感心した。

 田嶋さんは凱旋門賞も現地で応援する。「前哨戦を勝ってすぐに馬房で草を食べている映像を見て、全然疲れてないのかなと。のんびりマイペースな姿は当時と変わらない」と目を細める。「状態も上がってきているようなので、どこまで通用するか楽しみ」と期待した。

 凱旋門賞には日本から、ビザンチンドリーム、アロヒアリイの2頭も出走する。発走は日本時間の5日午後11時5分。グリーンチャンネルなどで生放送される。【安高晋】

毎日新聞

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