信号システム10年前から設定ミス、ATCも作動せず 田園都市線脱線

2025/10/07 21:27 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 川崎市の東急田園都市線梶が谷駅で起きた列車同士の衝突脱線事故で、東急電鉄は7日、信号システムに設定ミスがあり、普通列車が停止すべき状況なのに運転台に青信号が表示されていたと明らかにした。システム情報をもとにした自動列車制御装置(ATC)でも青信号と認識され、自動ブレーキが作動しなかった。10年前から設定ミスの状態だったという。

 事故で運休していた田園都市線と大井町線は7日午前0時ごろ再開し、7日始発からは通常ダイヤで運行。5~6日には計1107本が運休し、65万2100人に影響した。東急電鉄の福田誠一社長は7日に東京都内で記者会見し、「大変多くのお客様にご迷惑とご心配をおかけした。深くおわびする」と謝罪した。

 同社によると、列車の位置を検知する信号システムが正常に作動していれば、はみだしていた車両を検知し、普通列車の運転台に赤信号が表示される構造になっている。そこで運転士が減速しなくても、制御装置が作動して衝突前に自動で止まる仕組みだった。

 ところが、同社はプログラムの設定の段階で、こうした安全装置の作動が必要な対象に、現場の留置線付近に停車する列車を含めていなかった。梶が谷駅の線路改修工事を2015年3月に実施した際、プログラムの設定を誤ったといい、以降はそのまま気づかなかったという。

 事故は5日午後11時4分に発生。回送列車が駅に隣接する留置線へ向かった時に速度超過が検知され、オーバーランを防ぐ信号が作動し、所定位置より手前で停車した。その際、最後尾の車両が本線にはみ出した状態だった。

 普通列車は青信号のまま駅に向けて走行した。その後、運転士は回送列車に気づいて非常ブレーキをかけたが間に合わず、時速48キロで回送列車の最後尾の車両に衝突。この車両の2軸が脱線した。乗客と乗員にけがはなかった。

 東急電鉄は事故を受け、今回の現場と同じく、複数の線路を制御する装置がある場所に関し、システムのプログラム設定に誤りがないか点検するという。

 関東運輸局は同社に対し、原因究明と再発防止を講じるよう警告文書を出している。【木村敦彦】

毎日新聞

社会

社会一覧>

写真ニュース