事件後、周辺に6時間半滞在 埼玉老人ホーム殺人、不可解な行動多く

2025/10/22 19:35 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 埼玉県鶴ケ島市の老人ホームで入所者の女性2人が殺害された事件は、22日で発生から1週間が過ぎた。1人に対する殺人容疑で逮捕された元職員、木村斗哉(とうや)容疑者(22)は容疑を認めたが、動機についてはあいまいな説明をしているという。遠方の自宅から自転車で現場に向かい、事件後は周辺に6時間半以上とどまるなど、容疑者の行動には不可解な点が多く残っており、県警が解明を進めている。

 県警によると、事件は15日午前3時半ごろ、夜勤中の介護士が自室のベッドで血を流していた小林登志子さん(89)と上井アキ子さん(89)に気づいて発覚。職員が同4時55分ごろに110番した。同8時40分ごろ、施設から約250メートル離れた路上で警察官が木村容疑者を発見し、確保した。

 施設内の防犯カメラには、木村容疑者とみられる人物がフードをかぶってマスクを着け、刃物を手にうろつく姿が映っていた。約1時間にわたって施設内にいたとみられる。

 県警はカメラの録画時間などから、木村容疑者が午前1時50分~2時5分ごろに小林さんを襲ったと判断。それから6時間半以上が過ぎても、木村容疑者は現場の近くにとどまっていたことになる。

 現場から約600メートルの路上では、木村容疑者のバッグが発見された。事件後に遺棄したとみられ、中には凶器とみられるナイフや衣類が入っていた。

 この場所では、木村容疑者の自転車も見つかった。直線距離で約20キロ離れた同県熊谷市の自宅から自転車で来たとみられる。確保時には現金をまったく持っておらず、「電車賃がなく、自転車を使った」などと供述しているという。

 木村容疑者は「ベッドで寝ている2人の首を絞め、ナイフで胸のあたりを刺した」と殺害を認めているが、動機はまだ不明確だ。2024年7月まで施設で介護職として勤務しており、被害者とは面識があったとみられる。だが、「2人に恨みはない」とも話している。県警は、上井さんを殺害した容疑でも調べを進める。

 元職員が逮捕されたことで、介護施設などの安全対策も改めて問われている。木村容疑者は在職時に覚えていた暗証番号を入力し、通用口から侵入したと説明している。暗証番号は4桁で、退職時から変更されていなかったという。

 16年9月に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で45人が殺傷された事件では、厚生労働省が福祉施設の防犯対策の強化を求める通知を出した。通知には暗証番号や鍵の変更も含まれていた。

 今回の事件後、厚労省は10月16日付で全国の自治体に対し、同様の通知を再度出した。福岡資麿厚労相(当時)は17日の閣議後記者会見で「必要な対策に万全を期したい」と注意を促した。【田原拓郎、板鼻歳也、加藤佑輔】

毎日新聞

社会

社会一覧>