線虫が子孫へDNA継承するメカニズム解明 理研などのチーム

2025/10/24 05:45 

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 線虫が子孫へDNAを継承しているメカニズムを解明したと、理化学研究所などが発表した。研究チームを率いた理研生命機能科学研究センター配偶子形成研究チームの澁谷大輝チームディレクターは「世代を超えて生物が生き続ける仕組みの理解につながる成果だ」と話している。成果は23日、米科学誌サイエンスに掲載された。

 生物の遺伝情報が納められた染色体の末端にある「テロメア」は、細胞が分裂するたびに短くなり、ある一定の短さになると細胞は死を迎える。しかし、卵子や精子など次世代にかかわる生殖細胞では、例外的に「テロメレース」という酵素が働き、テロメアの長さを維持する。

 研究チームはまず、線虫の一種「C・エレガンス」を用い、テロメレースがどこに存在するかを確認。たんぱく質を基にその鋳型となるRNA(リボ核酸)の配列を探る方法で、テロメレースの遺伝情報の受け渡し役となる「テロメレースRNA」の配列を解析した。その結果、DNAの不要部分とされる「イントロン」に存在していた。ゲノム編集で線虫からテロメレースRNAの配列を除去すると、テロメアは世代を経るごとに短くなり、およそ15世代以内で絶滅したことから、テロメレースRNAとしての機能を持つことが分かった。

 また、このテロメレースRNAを別の生殖細胞の遺伝子にあるイントロンに移植すると、世代を超えて繁殖が繰り返された。一方、神経細胞などの遺伝子ではテロメアが短くなり、およそ15世代以内で絶滅した。

 澁谷チームディレクターは「世代を超えて種の存続を保証する全く新しい戦略の発見だ」と話している。【田中韻】

毎日新聞

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