毎日新聞が蒲郡市を提訴 記事をネットで無断共有、著作権侵害と主張

2025/11/06 18:00 

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 毎日新聞の記事980件を市役所などの内部ネットワーク(イントラネット)に無断で共有したとして、毎日新聞社は6日、愛知県蒲郡市に約2200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。共有された記事を多数の職員が閲覧できる状態が10年以上続いていたとし、著作権が長期にわたり侵害されたと主張している。

 著作権法は、著作者の許諾を得ずに、著作物を複製したり、インターネット上で共有したりする行為を禁じている。市は当初、著作権侵害の疑いを認めていたが、その後の協議で違法性を否定するようになったため提訴に至った。

 訴状によると、市は遅くとも2012年以降、新聞記事をPDF化したデータを内部ネットワークの共有フォルダーにアップロードするようになった。データは市役所や消防署、市民病院などで使われていた市所有のパソコン計約1000台で閲覧することができたとしている。

 蒲郡市は24年7月、内部通報を受けて鈴木寿明市長が毎日新聞中部本社(名古屋市)を訪れて謝罪した。謝罪文には「著作権法に対する理解認識が不十分だった」などと記載されていた。しかし、市は約3カ月後、代理人弁護士を通じて著作権侵害には当たらないと毎日新聞に通知。共有された記事件数の問い合わせにも回答を拒否した。

 著作権法には行政の目的のために必要と認められる場合には許諾なしに著作物の複製や共有を認める除外規定がある。毎日新聞は訴状で、蒲郡市の事務遂行と無関係な記事も共有されていることなどから除外規定は適用されないと主張。記事の無断利用に関する社内規定に基づき請求額を算定した。

 新聞記事の無断共有を巡っては、社内の電子掲示板で日本経済新聞社と中日新聞社の記事を全従業員が閲覧できる状態にしていたとして、つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京)に計約829万円の賠償を命じた2件の判決が23、24年に確定している。この訴訟で、知財高裁は「新聞記事には表現の工夫があり、無断共有は著作権侵害が認められる」との判断を示した。

 蒲郡市は「訴状が届いていないのでコメントできない」とした。

 ◇毎日新聞社社長室広報ユニットの話

 新聞社にとって、記事は最も重要なコンテンツであり、貴重な知的財産です。法令を順守すべき行政機関が著作権を侵害していた行為は極めて遺憾です。訴訟で市の法的責任を明らかにしてまいります。

 ◇読売新聞も提訴

 読売新聞社の東京、大阪、西部各本社も6日、記事849件を内部ネットワークで無断共有されたとして、愛知県蒲郡市に約6100万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 読売新聞は、蒲郡市は少なくとも2024年までの約12年間、職員ら1200人超が共有された記事を閲覧できる状態にしていたと主張。市長から法令順守を徹底するとの考えが示された3カ月後、市は代理人弁護士を通じて「著作物に該当しないものも含まれる」などと著作権侵害を否定する見解を示してきたという。請求額は同社の規定で算定した。

 読売新聞グループ本社広報部は「蒲郡市による記事の無断利用や責任を否定する対応を看過できないことから提訴した」とコメントした。

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