つくばに残る飛行場と特攻隊の記憶 谷田部海軍航空基地を訪ねた
茨城県内には、先の大戦で使われた知られざる飛行場跡がある。多くはもともとパイロットの訓練場として整備され、後に特攻隊の編成場にもなった。その一つ「谷田部海軍航空基地」(つくば市)跡を訪ねた。
つくば市観音台の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)にある実験用の圃場(ほじょう)。土壌を自然のまま保存するため、通常は立ち入り禁止になっており、雑木林が広がる。
農研機構の許可を受けて中に立ち入ると、長さ数十メートル、高さは人の背丈ほどの、大きなU字型をした土塁のようなものが現れた。
「これが掩体壕(えんたいごう)の跡です」
案内してくれた契約職員の大水豊司さん(61)が語る。
掩体壕とは、戦闘機を空襲から守るために隠した格納庫だ。滑走路の周りにいくつも造られたが、戦後にほとんどが取り壊された。県内では阿見町や鹿嶋市などにわずかに残る。
大水さんは約40年間、この圃場を管理してきた。
「盛り土のようなものがある」程度の認識で、とくに気に留めていなかったというが、2000年代の調査で掩体壕だとわかり、驚いたという。
◇「赤とんぼ」飛び立っていたが…
同基地は1930年代に建設された。霞ケ浦海軍航空隊(阿見町)の分遣隊(ぶんけんたい)が置かれ、39年に谷田部海軍航空隊として独立した。
兵舎や芝生の滑走路を備え「赤とんぼ」と呼ばれたオレンジ色の練習機が飛び立っていた。パイロットの教育、訓練が役目だった。
しかし戦況が悪化した45年3月、教育任務を停止。零戦が配備され、特攻隊の編成基地へと変わった。
同基地の特攻隊は「昭和隊」と名付けられた。第1次から第7次まで編成され、鹿屋海軍航空基地(鹿児島県鹿屋市)に転進。54人中40人が死亡した。
つくば市文化財課主任の久保田昌子さんは、祖父が同基地所属の兵隊だった。出撃せずに終戦を迎え、2012年に亡くなった。
遺品の中に、当時のアルバムや使っていた木箱、名簿などが見つかった。アルバムには、昭和隊が鹿屋へ転進した45年4月7日に同基地で開かれた「お別れの会」で整列した隊員らの姿もある。
祖父は、そのときの思いをしたためている。
「勝利のあとの光栄に 一切わが身の連ることを考へない 切ないまでに清らかな純忠の姿 昭和隊の勇士 その英霊に捧(ささ)げる 感謝の涙 滾々(こんこん)として拭えども 瞼(まぶた)に溢(あふ)る」(原文ママ)
久保田さんは遺品を、開催中の市の企画展「戦争とつくば」に提供している。「これから出撃する特攻隊がどういう生活をしていたかがよく分かる資料。未来の世代に伝えたい」
◇かつてをしのばせる「飛行場橋」
県内の戦争遺跡を調査してきた伊藤純郎・筑波大名誉教授(歴史教育学)によると、県内の飛行場はわかっているだけで、建設途中のものも含め23カ所に上る。茨城は首都・東京に近く平地が確保でき、飛行場を造りやすい場所だったためだ。
多くの飛行場は、戦況の悪化につれ、訓練場から実戦部隊、特攻隊とその目的を変えていった。
筑波山を目標に見立て「鬼の筑波(笠間市の筑波海軍航空隊)、地獄の谷田部」と呼ばれるほど苛烈(かれつ)な訓練に励んだ。茨城は特攻隊にとって「故郷」と呼べる場所だと、伊藤さんは言う。
その上で、特攻隊を英雄視したり、「犬死に」とさげすんだりすることに疑問を呈し、こう語る。
「兵隊一人一人はパイロットを夢見ていたが、歴史のあやで特攻隊になってしまった。それを生み出した時代とは何かを考えてほしい」
同基地には戦後、後に農研機構となる旧農林省の研究施設が移転。兵舎も滑走路もなくなったが、農研機構の入り口にある常磐道をまたぐ橋は「飛行場橋」と名付けられ、かつて基地だったことをしのばせる。
企画展「戦争とつくば」は、7日まで小田城跡歴史ひろば案内所(つくば市小田)、18日から来年2月8日まで谷田部郷土資料館(同市谷田部)で開催。6日には伊藤さんの講演も市役所である(定員100人)。いずれも無料。問い合わせは市文化財課(029・883・1111)へ。【酒造唯】
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