被災者の思い込めた復興応援ソング 石碑に刻む 胆振東部地震

2025/12/08 09:00 

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 2018年9月6日に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震の被害を後世に伝えようと、北海道北広島市内の公園に被災者の思いなどを込めた石碑が設置された。石碑にはオリジナルの復興応援ソング「花から花へ 花から人へ」の歌詞全文が刻まれた。被災者は「住民の思いを形にできた」と話している。

 石碑を設置したのは、同市大曲並木3の被災者でつくる「大曲並木3丁目復興委員会」。同地区に整備された「みどりの里緑地公園」に縦70センチ、横90センチの石碑を設けた。

 復興委の竹内明広会長(62)は昨年3月、地元の福祉施設などでボランティアの音楽活動をしている消防士の小玉浩司さん(52)=同市大曲柏葉=にオリジナルソングの制作を依頼。小玉さんは、もともと復興委が掲げていたスローガン「花から花へ 花から人へ」からイメージを広げ、竹内さんら被災者から思いや気持ちを聞き取った上で、約半年をかけて曲をつくりあげた。

 復興委は当初、「花から花へ 花から人へ」だけを石碑に刻むことも検討していたが、被災者の思いが詰まった歌詞全文を刻むことにしたという。

 小玉さんは曲について「復興に向け、花から元気をもらい、人と人が支え合って生きていくことなどを表現した。花に囲まれ、人が優しい気持ちになるよう柔らかい曲調にした」と説明し「全国各地の災害の被災者の方にも聞いてもらい、励ますことにつながればと思う」と話した。

 竹内さんは石碑を前に「震災から7年がたち、ようやく復興できた」と話し「被災者は想像以上に孤独。心のつながりを歌った曲が心の支えになる。被災者が公園で年に数回でも会い、いつかつらい昔話を笑い話に変えられたらいいなと思う」と期待した。

 復興応援ソング「花から花へ 花から人へ」は、動画サイト「ユーチューブ」で鑑賞できる。

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 石碑を設置した公園は、地震で全壊した住宅11棟が建っていた土地だったが、費用面で宅地に戻すことが難しく、市が土地を買い取り、防災機能を併せ持つ緑地公園として整備した。面積は約3000平方メートル。

 公園内のあずまやは四方をシートで覆うと「防災シェルター」の役割を果たすほか、ベンチやスツール計13基は座板を外すと「かまど」として使用できる。ソーラー照明2基もあり、災害時には電源として使用できるという。総事業費は約7000万円で、今年10月から供用が開始されている。【高山純二】

毎日新聞

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