ショパンピアノコンクール優勝、エリック・ルーさん「夢が実現した」

2025/12/10 20:50 

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 10月にワルシャワで開かれた「第19回ショパン国際ピアノコンクール」の覇者、米国人ピアニストのエリック・ルーさんが10日、東京都内で記者会見した。

 世界中の注目を集めたコンクールでの優勝から約1カ月半。「私の大きな夢が実現したと改めて思うし、自分の人生にとって大きなマイルストーンの一つとなった」と今の心境を語った。

 1997年生まれのルーさんは、17歳で出場した第17回ショパンコンクール(2015年)で第4位に入賞している。

 2018年には、英国で3年に1度開催される「リーズ国際ピアノコンクール」で優勝した。

 ルーマニア出身のラドゥ・ルプー(22年に76歳で死去)や、フランス出身のミシェル・ダルベルトさんらが優勝者に名を連ねる同コンクールでの優勝は、演奏家として歩み出す上での一つの到達点のようにも思える。

 だが、2年前にルーさんはショパンコンクールに再挑戦することを決意した。

 理由は「ピアニストとしてのトップレベルのキャリアを築くことを考えたとき、土台をより強固なものにしたいと思った」からだ。

 その舞台として、5年に1度開催される「世界最高峰のコンクール」にして「世界中で最も注目されているコンクール」以外の選択肢はなかった。

 ショパンについて、ルーさんは「天才的であり、彼の残してくれたものの大きさを考えると彼が人間であることをすら忘れる」と話す。

 39年という短い生涯だったが「困難な人生を歩んだ中でも、深い精神性を音楽に込め、200年たった今でも世界中で愛される曲を作った。世界がどれだけ変わろうとも、ショパンの人間味あふれる音楽性は普遍的だと思います」。

 ショパンコンクールでの優勝後、世界各国のオーケストラや主催者からのオファーが絶えない。

 「道が開いていると感じます。とはいえ、今は一つ一つのコンサートに丁寧に向き合っています」

 記者会見では、コンクールの2次予選で弾いた「ワルツ嬰ハ短調作品64の2」と、1次予選で弾いた「ワルツ変イ長調作品42」を披露。会場のあちこちでカメラのシャッターが切られる中、集中を切らすことなく、繊細かつ豊かな詩情で演奏した。

 会見で聞き手を務めた国立フレデリク・ショパン研究所のアレクサンデル・ラスコフスキ広報担当官から「ショパンを弾くことに飽きることはないか?」と聞かれたルーさんは、次のように言い切った。

 「体力的には疲れたと感じることもありますが、ショパンを演奏することに飽きたと思うことは一切ありません。日本の素晴らしいホールで演奏できることを楽しみにしています。ショパンは作曲していたとき、何を考えていたのか。その特別な(ショパンの)思いを、私の演奏で届けたいと思います」

 「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 優勝者リサイタル」は、12月15日に東京オペラシティ・コンサートホール(初台)、16日に東京芸術劇場(池袋)で開催する。チケットはいずれも完売。15日はくしくもルーさんの28歳の誕生日でもある。

 リサイタルの他、12、13日にはNHK交響楽団の第2053回定期公演Cプログラムにソリストとして登場し、N響首席指揮者のファビオ・ルイージとともにコンクール本選で弾いた「ピアノ協奏曲第2番ヘ短調」を披露する。こちらもチケットは既に完売したが、N響によると、後日のテレビ放送を予定しているという。【西本龍太朗】

毎日新聞

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