弁護側「悲惨な生い立ち重視を」 懲役20年以下主張 元首相銃撃

2025/12/18 17:11 

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 安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判が18日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であり、弁護側は「悲惨な生い立ちが事件に関係しており、重視されるべきだ」と訴えた。無期懲役の求刑については「あまりにも重い」と主張し、懲役20年までにとどめるべきだと主張した。

 弁護側は最終弁論で「被告の罪を肯定するわけではない」と前置きしたうえで、「ひたすら重い刑はどういう効果があるのか。被告が罪の重さを自覚し、更生の意思を持つのが望ましい解決だ」と主張した。

 続けて、被告の母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を信仰し、家庭環境に与えた影響について、法廷での証言などを踏まえて説明した。

 弁論によると、母親による総額約1億円の献金で経済的に困窮し、被告の兄は自ら命を絶った。兄を亡くして怒りを覚えた被告は、教団幹部への襲撃を考えるようになった。一方で、安倍氏と教団に関係があると捉えており、危機感と絶望感から最終的に安倍氏が標的とされた。

 こうした経緯により、弁護側は「母親の献金は教団の違法な勧誘によるもの」とし、「被告やきょうだいは成長の過程を失われ、家族は崩壊し、被告の人生が狂った」と指摘。「母親の入信により未成年時代からの悲惨な状況があり、生い立ちは重視されるべきだ」と強調した。

 これに先立ち、検察側は無期懲役を求刑した論告で、公の場所で手製銃を発砲した危険性や、月日をかけて銃を製造した計画性を重視。生い立ちについては「不遇さは否定はしないが、善悪を判断できる40代の社会人だ」とし、「被害者に無関係で、被告の情状に大きな影響を与えるべきではない」と主張した。【田辺泰裕、木谷郁佳、岩崎歩、林みづき】

毎日新聞

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