耳慣れない言葉よりも…「後発地震注意情報」やさしく伝えた防災放送
今後続けて大きな地震が発生する可能性があります。すぐに避難できる備えを改めて行いましょう――。
8日深夜に青森県東方沖で発生した地震で初めて発表された「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を簡潔に伝えた自治体がある。岩手県久慈市は後発地震を使わず「大きな地震への備え」とする呼び掛け文を作り、発表から5時間後に市民に放送などで伝えた。担当課は「耳慣れない言葉で不安にならないように分かりやすく伝えたかった」と振り返る。
注意情報は「日本海溝・千島海溝地震」の想定震源域でマグニチュード(M)7以上の地震が発生すると、その後に大規模地震が起きる可能性が高まるとして、1週間は普段より避難の準備に留意するよう呼び掛ける。2022年12月に運用が始まったが、対象地域の北海道から千葉県まで7道県182市町村での認知度は低かったとみられる。
今回の地震は8日午後11時15分に発生。地震の規模はM7・5で気象庁は9日午前2時に注意情報を発表した。久慈市は発表から45分後に開いた災害対策本部会議で、注意情報を周知するため、期間中は1日3回情報発信することを決めた。
防災危機管理課の下舘勝佳主査は、正式名称の「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は計15文字あり、市内全域に設置した防災行政無線で放送するには長すぎると考えた。短い言葉として「巨大地震」も浮かんだが、注意喚起が目的のため、刺激的な表現は避けることにした。
下舘さんは、わかりやすく不安をあおらない言い回しとして「大きな地震への備え」を発案し、工藤健二課長らの了解を得た。この他、非常用持ち出し袋や備蓄食料の確認を求め、注意情報が事前避難の呼びかけではないことを加えた。正式名称は一文字も使わなかった。周辺自治体でも注意情報に関する呼び掛けを実施したが「後発地震」に触れていた。
呼び掛け文は9日午前7時20分ごろ、防災行政無線を通じて市内全域に放送された。ほぼ同時に送信した公式LINE(ライン)や市民向けのメールには、文面の冒頭に正式名称を入れた。その後も連日朝に加え、午後1時過ぎと午後8時前にも発信。1日3回の呼びかけを注意情報が終了する15日夜まで続けた。
久慈市は津波避難についても呼び掛けた。地震発生直後に自動車避難で渋滞が発生したことが判明したため、11日夕に渋滞回避情報を記した市ホームページ(HP)のリンクをLINEとメールで流した。渋滞発生箇所の他、中心部への車両の滞留を避けるため、遠方の内陸部への移動を促した。
注意情報終了後には新たな巨大地震による津波の浸水想定域や避難目標地点などを一覧できるコーナーをHPに開設するなど、今後も情報発信を強化する予定。防災危機管理課の工藤課長は「放送や交流サイト(SNS)など電子媒体だけでなく、対面で呼び掛ける機会も増やしたい」と話す。【奥田伸一】
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