御嶽山、年度末にも国定公園指定へ 保護と観光客増に期待

2025/12/24 06:15 

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 御嶽山(長野、岐阜県境、3067メートル)が2025年度末にも国定公園に指定される見込みとなり、長野県は19日、記念事業を行うための「県実行委員会」設立総会を木曽町で開いた。指定記念式典の開催などを決め、「地元でも指定の動きを知らない人が多い」として、今後、周知に力を入れることを申し合わせた。【去石信一】

 実行委は県4部局と地元2町村、観光など4団体の計10人が委員になった。指定を機に、自然保護はもとより、観光客増加を期待。誘客計画の策定、火山防災と環境保全の啓発企画、地元企業や商店との連携などに取り組むことを決めた。

 会長に就いた王滝村の越原道広村長は「ナショナルパークとして世界に発信する機会。持続可能な利用のため皆さんの知恵を借りたい」とあいさつした。副会長になった木曽町の加藤真和町長は「御嶽山には二つの『おそれ』がある。火山としての恐れ、山岳宗教の対象として畏怖(いふ)を意味するおそれ」と述べ、その特徴を生かしたPRを提案した。一方、各委員から「地元でも国定公園になることを知らない人がまだまだいる」「地域の人が盛り上がらなければ事業は成功しない」などの意見が相次ぎ、広報の重要性を確認した。

 7月4日を想定した記念式典の会場として、事務局の県は、木曽町文化交流センターを挙げた。だが、委員から「メディアも来るだろうから、建物の中ではなく、御嶽山の雄大な自然が感じられる場所がいい」との考えが示され、同委の検討課題とした。この委員は、登山口とビジターセンターがある中腹の「田の原」を候補に挙げた。

 御嶽山は国内有数の規模をもつ独立峰。火山特有の荒々しい景色が見られる一方、標高によって植生が多様に変化し、絶滅危惧種のライチョウも生息する。中世以降、霊場として盛んに信仰され、現在でも「御嶽講」の信者が登山している。

 県は1952年、県立自然公園(1万8764ヘクタール)に指定。岐阜県側も県立自然公園(4276ヘクタール)の位置付けだ。国定公園としては計2万8406ヘクタールに面積を拡大する。厳重に管理できる「特別保護地区」を新たに設定できて、貴重な自然の継承が期待できる。

 環境省は2022年度、御嶽山を国定公園の新規指定候補地とし、23年度に自然環境調査を実施。24年度に2県関係者が公園計画書を作成するなどしたうえで、阿部守一・長野県知事ら関係自治体の首長らが指定に向けた「申出書」を環境省に提出した。25年度は環境省中央環境審議会が現地調査しており、26年3月に環境相が国定公園に指定・告示する可能性が高まっている。

 県内には現在、5国立公園、4国定公園、5県立自然公園がある。

毎日新聞

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