源泉水位低下の嬉野温泉、配湯会社が市に事業売却意向 佐賀

2025/12/24 06:45 

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 佐賀県嬉野市の村上大祐市長は23日、臨時記者会見を開き、源泉の水位低下が問題となっている嬉野温泉で、温泉街の旅館・ホテル21軒や住宅などに温泉を供給する企業「嬉野温泉配湯」(同市)が配湯事業を市に売却する意向を示していると明らかにした。公共事業化について村上市長は「嬉野温泉の100年の安心を作るためあるべき姿を模索し、2026年中に方針を決定する」と述べた。

 「日本三大美肌の湯」として知られる嬉野温泉では昨冬、源泉の水位低下問題が顕在化。市所有の源泉の月平均水位は1月、5年前の同月比で約8メートル低くなっていた。

 県は、九州新幹線長崎ルート(西九州新幹線)開業や新型コロナウイルス禍の収束に伴う観光客増で湯のくみ上げ量が増えたことが主な原因と分析し、24年12月、温泉地全体で1日当たりのくみ上げ量を前年比1割減の2800トンに抑えるよう旅館などに要請。嬉野温泉旅館組合も、深夜帯に客室の温泉を出しっぱなしにしないよう利用客に呼び掛け、一部の旅館は日帰り入浴を休止するなどしている。こうした「節湯」の取り組みなどで、市源泉の25年11月の水位は前年同月比で2メートル回復した。

 一方、水位低下は配管からの漏れも一因とされる。市の調査で「嬉野温泉配湯」に関係する配管の老朽化が判明。漏水箇所は同社などが順次修繕しているが、市が要望した全体の更新には至っていない。温泉街の旅館・ホテルのうち7割が同社の配湯を受けており、嬉野温泉旅館組合などは12日、対策を市に要望。市が改めて同社代表と面談した18日、配湯事業の売却の意向を示されたという。

 公共事業化にかかる費用について、村上市長は「配湯事業自体は基本的に利益率が高いはず。初期投資はあるが、長期で見れば市民生活への影響が生じないようにする責任がある」と述べた。【成松秋穂】

毎日新聞

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