ろう学校で救命活動の講習会 「メソッドカード」活用で不安なく
聴覚障害者が周囲の人と協力して救命活動するための「救命メソッドカード」を活用した救命講習会が22日、津市藤方の県立ろう学校で初めて開かれた。中学部と高等部の生徒計30人が参加し、カードの考案者が所属する志摩市消防本部の職員たちから応急処置の手順の説明を受けながら、下校時や買い物時など4パターンのシチュエーションでの救命活動を体験した。
講習会ではカードを活用することで健聴者に救助の協力を求めたほか、人形を使った胸骨圧迫や人工呼吸、AED(自動体外式除細動器)の使用なども学んだ。高等部3年の女子生徒は「人工内耳が外れて聞こえない状態になっても、カードがあることによって、人を助けることができる。聞こえない人や声が出ない人など、いろんな人が使えると思った」と話した。
カードを考案したのは講習会で講師を務めた消防士の丸山莉奈さん(33)。約5年前に聴覚障害のある知人から「友人が倒れた時に何もすることができなかった」と悔しさを伝えられたことをきっかけに、聴覚障害者の救命講習の実態を調べると、手話通訳者の確保など課題が多いことを知ったという。
「講習など受けていなくても救命活動ができないか」と考え、思いついたのがカードの作成だった。2024年5月に行われた全国消防職員意見発表会では「想いを形に」をテーマに、耳が聞こえなくても緊急時に自信をもってバイスタンダー(事故現場などで対応できる人材)となれるよう「二次元コード付の救命メソッドカード」を提案し、最優秀賞に選ばれた。
受賞を機に志摩市消防本部内でもプロジェクトチームが立ち上げられた。手話サークルから意見を聞くなどして約1年間かけて作成したカードには指などでさしながら意思疎通を図れるように、救急の現場で使用する言葉に合わせた手書きのイラストや50音表が記載された。心肺蘇生法の動画が見られるQRコードも付けられた。
カードは完成から1年もたたないうちに神奈川や岡山、秋田の各県でも利用されているという。将来はアプリでの利用も視野に入れ、丸山さんは「改良し、より良い物ができればいい。これからも必要な人に行き渡るようにしていきたい」と普及を目指していく。【渋谷雅也】
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