遺構解体の決定巡る公文書不存在 北九州市長、「妥当」の結論を強調
初代門司港駅関連遺構の解体決定に至る経緯を示す文書を「不存在」とした北九州市を批判する答申を市情報公開審査会が出した問題に関し、武内和久市長は25日の定例記者会見で「市の決定は妥当との結論が示された」と強調した。批判には応えなかった。審査会から求められた文書作成への対応にも具体策は示さなかった。
毎日新聞は、市が解体方針を決めるに至った経緯がわかる議事録や職員間のメールなどを開示請求したが市はいずれも「不存在」と回答。毎日新聞の不服審査請求に、市情報公開審査会は10月28日付で答申を出していた。
答申は、審査会の持つ権限の限界もあり、文書の存在の確認に至らず市の主張を「妥当と判断せざるを得ない」と結論。同時に文書を残さない市の姿勢を「情報公開制度の趣旨を適切に理解して職務に当たっていたと評価することは到底できない」などと付帯意見で批判。説明責任を全うするよう求めていた。
答申について武内市長は、結論部分を取り上げ「市の決定は妥当との結論が改めて示された。これまでも文書管理制度の趣旨に基づき適切に事務を執行してきた」。審査会の批判に対しては「今後もこれまで通り適切に執行してまいりたい」と述べるにとどまった。
また文書の不存在を「社会通念上信用しがたい」とする答申の指摘に対し、担当の正野睦朗・都市戦略局都市再生推進部長は、協議録に対象を絞った上で「ないものはない」と言い切った。
公文書管理法は、法令制定などの意思決定過程を国民が検証できる文書作成を国の機関に義務づけ、地方自治体にも同様の努力を求めている。2009年の同法公布時、武内市長は厚生労働省に在籍し、法の規定を順守する立場にあった。同法に準じた規定を市で作る考えを聞かれた武内市長は「一つの提案としてお聞きしておきたい」とのみ答えた。
◇情報公開に詳しい三木由希子・NPO法人「情報公開クリアリングハウス」理事長の話
確かに答申の結論は文書がなかったというもの。だが文書を作っていないことの是非は別問題で、市長に問われているのはこの点だ。市長や職員が交代しても意思決定の過程を引き継ぐことは近代の行政組織の基本。記録がなくても行政の適正な運営は担保されていると考えているのか、市長は自らの見解を語るべきだ。【伊藤和人】
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