教員採用倍率、過去最低の2.9倍 「質の維持」に必要な3倍下回る
2025年度の公立学校教員の採用倍率は前年度比0・3ポイント減の2・9倍となり、過去最低を更新した。文部科学省が25日に公表した調査結果で判明した。倍率の低下は8年連続で、一般的に人材の質を維持するために必要とされる3倍を初めて下回った。大量退職に伴う採用者の増加に受験者数が追いついていない。文科省は労働環境の改善のほか、選考時期の早期化などの対策を自治体に促しているが、低下に歯止めがかからない状況だ。
調査は47都道府県や20政令市の教育委員会などが対象。24年度に実施した採用選考の状況を聞き取った。採用者の総数は3万7375人(前年度比954人増)で、1986年度以降で最多。65教委(合同実施は1教委として計算)のうち43教委で前年度より増えた。
倍率を試験区分別にみると、小学校2・0倍(同0・2ポイント減)▽中学校3・6倍(同0・4ポイント減)▽高校3・8倍(同0・6ポイント減)▽特別支援学校2・0倍(同0・2ポイント減)。小中高はいずれも過去最低となった。全体の倍率は過去最高の13・3倍となった00年度以降、低下傾向が続く。
大量採用の背景には、団塊ジュニアの小学校入学に合わせて採用された世代の退職が続いていることがある。地域差があり、関西では大量退職・大量採用が一段落しているとみられる一方、東北では今後も継続が予想されるという。このほか、特別支援学級の増加も採用数拡大の一因とみられている。
受験者は53教委で減少し、総数は10万9123人。前年度より7059人減って過去最少だった。内訳をみると、小中のいずれでも新卒者がほぼ横ばいで推移しているのに対し、既卒者の減少が著しい。
文科省は、新卒後に早期合格する人が増えて非常勤講師などとして経験を重ねる既卒者が減ったほか、既卒者が民間に流出するケースも多いとみている。
文科省は24年春、教員に残業代を支払わない代わりに給料月額の一定割合を一律支給する教職調整額を増額するなど教職の処遇改善策を打ち出した。ただ、その時点で出願時期が過ぎていた自治体もある。長時間勤務のイメージは根強く、給料の増額が学生の進路選択に与えた影響は限定的だったとみられる。
文科省の担当者は「厳しい状況だ。短期的には、教員免許を持ちながら民間に就職した『ペーパーティーチャー』の掘り起こしなどが重要だ。中長期的には働き方改革の加速や処遇改善を一体的に進める必要がある」としている。【斎藤文太郎】
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