小笠原諸島のウミガメから大型プラごみ 深刻な「国を超えた汚染」

2026/02/01 16:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 しわくちゃになったシート状のごみを広げると中国語やハングルも――。立正大などの研究チームの調査で、東京・小笠原諸島を泳ぐアオウミガメの体内から長さ60センチを超えるものを含む大きなプラスチックごみが多数見つかった。一部にはカメの回遊域より広い、外国に由来するプラごみもあり、「越境汚染」の深刻さが浮き彫りになった。

 ◇10匹のうち7匹の体内から発見

 チームは東京から南に約1000キロの小笠原諸島・母島で2021年3月、アオウミガメ10匹から消化管の内容物を採取。顕微鏡による観察や遺伝子解析などを実施し、ごみの起源やカメが摂食してしまった理由などを調べた。

 プラごみが発見されたのは10匹のうち7匹。微細なものを除いた10平方ミリ以上のごみも6匹から計92個発見され、31個見つかったカメもいた。

 ペットボトルのキャップやラベル、コンタクトレンズのパック、不織布マスクなどで、中にはハングルが書かれた韓国製の飲み物のラベルと思われるものや、中国語の「簡体字」表記の説明書きから肥料の袋とみられるものもあった。

 母島で見られるアオウミガメは、繁殖期に三陸沖などの日本の太平洋沿岸から回遊してくることが知られている。このため、チームは「摂食されたごみは、カメの回遊域よりも広い範囲に起源を持つと推定される」として越境汚染と判断した。

 プラごみを大きさで分類すると、10平方センチ~1平方メートルのものが92個のうち52個で56・5%、10平方ミリ~10平方センチのものは38個で41・3%を占めた。大きいほどシート状のものが多く、約64センチ×約23センチのごみもあった。

 ◇クラゲと誤認して摂食か

 なぜこれほど大きなごみが体内にあるのか。

 チームが内容物を遺伝子解析したところ、カメはシオミドロなどの大型の海藻を主に食べていることが分かった。ただ、回遊中は沿岸のような藻場がなく、流れてくる藻やクラゲなどを餌としていたとみられる。

 一方、摂食されたプラごみは、シート状で大きいほど、白や半透明、透明のものが多かった。流れ藻と一緒に食べたり、クラゲなどと誤認したりしたと推察できるという。

 世界で処理されずに環境中に排出されたプラスチックごみの量は5210万トン(20年)と推定され、うち43%が陸地を経て海や川へ流れ出る危険性があると指摘される。大きなプラごみを摂食してしまったウミガメの場合、消化管の損傷や摂食障害、排せつへの影響の他、プラスチックに含まれる毒性化合物による深刻な健康被害が生じる可能性もある。

 ◇汚染軽減には国際協力が必要

 母島を拠点として自然環境保全に取り組む一般社団法人「アイランズケア」の研究員で、立正大の学生時代に研究を主導した藤谷天蔵(てんぞう)さんは「消化管を見ると、プラごみが詰まっていた部分が黒く変色していて衝撃を受けた」と振り返る。

 藤谷さんの指導教官だった岩崎望・同大名誉教授(海洋生物学)は「海のプラごみ汚染では微細なマイクロプラスチックなどに焦点が当たるが、ウミガメには大きなごみも影響するのが特徴」と指摘する。

 また、越境汚染について九州大海洋プラスチック研究センターの中野知香助教(大気水圏科学)は「汚染の軽減には、研究と並行して、プラスチックの生産量や使用量の削減などで国際協力が必要」としている。

 研究内容は1月2日付でインターネット科学雑誌「PeerJ」に掲載された。【荒木涼子】

毎日新聞

社会

社会一覧>