福島知事式辞、今年は報道引用せず 抽象的な言葉並ぶ 東日本大震災
福島県の内堀雅雄知事が11日、福島市で開かれた県主催の東日本大震災の追悼復興祈念式で式辞を読んだ。東京電力福島第1原発事故の被災地の個別のエピソードは5年ぶりに盛り込まなかった。過去3年間は報道内容を参考にし、視察していないのに、その場で被災者の声を聞いたかのような言い回しで語っていた。
報道内容から引用したのか毎日新聞が2月3日に質問したところ、県は同19日、「報道を参考にする場合がある」「著作権法上の『引用』には当たらない」などと回答し、事前連絡も引用元の明示も必要ではないとの見解を示した。再質問したところ、3月3日に「2023~25年は報道を参考にした」と認めた。
内堀知事は就任1年目の15年から式辞を読む。当初は犠牲者の冥福を祈り、復興への決意を述べていたが、22年から原発事故の被災地の個別のエピソードも盛り込むようになった。
23~25年は知事本人が視察していない行事やイベントについて触れ、その場にいた被災者の具体的な声も紹介。発言内容や情景描写の表現が、前年秋に報じられた毎日新聞やNHKニュースと酷似していた。
11日の祈念式には遺族代表や高市早苗首相らが参列。地震発生時刻の午後2時46分の黙とうの後、内堀知事が式辞を読んだ。
今年は、これまで中盤で触れていた被災地の個別のエピソードがなく、県政150周年を迎えることに触れたうえで「この150年の歩みは、正に『挑戦』の歴史そのものでありました」「先人たちから受け継がれてきた不屈の精神、そして、郷土に対する熱い思いと誇り、『ふくしまプライド。』を胸に」といった抽象的な言葉が並んだ。
知事が直接見聞きした被災者の声や場面が登場することはなかった。
式辞の分量は、報道を参考にして被災者の声を紹介していた過去3年間で、就任当初の2倍近い1200文字程度あった。今年は上記のような「地の文」が長かった結果、約1000文字だった。
内堀知事は閉会後、報道各社の取材に応じた。「式辞で報道を参考にしなかったのは事前に指摘があったためか」の質問に対し、「今年は東日本大震災と原発事故から15年、さらに県政150年という本県にとって極めて重要な年に当たります。その大切な年に当たっての思いを込めたのが今日の式辞です」などと述べた。
原発事故の被災経験を語る「語り部」活動を続け、24年に県の事業でフランスに派遣されて講話したこともある福島県南相馬市の高村美春さん(57)は今年の式辞について、「『先人』が具体的に何をやったのかもわからないし、被災地の今の話もないし……。きれいで当たり障りのない言葉が続いて、『あなたの言葉はどこにあるの?』と言いたくなった。報道を切り貼りした昨年までの式辞も違和感しかない」と話す。
式辞の前半、内堀知事は、震災と原発事故が「私たちの心に決して消えることのない深い傷痕を残しました」と読んだ。高村さんは「苦しんで、悲しんで、いまだに『傷』と向き合えない人もたくさんいる。『まだ15年』だと思う。知事も被災地に来る時は、新しい施設の視察だけでなく、いろんな立場の被災者と向き合ってほしい」と求めた。【尾崎修二、岩間理紀】
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