奈良・興福寺の東金堂院 回廊は通説の2倍超 創建時の姿が明らかに
興福寺(奈良市)の東金堂や五重塔があった東金堂院の創建当初の姿が奈良文化財研究所の発掘調査で見えてきた。回廊の東西の長さは従来の通説の51メートルの2倍を超え、規模は中金堂院より一回り大きい。また、回廊の礎石に残っていた柱の痕から直径が判明し、回廊の復元図も作成された。一つの寺でありながら中東西に三つの金堂を有する特異な伽藍(がらん)の意味を考える上で重要な手がかりになる。成果は11日公開された「発掘調査報告2025」に掲載された。
◇見つかったのは鎌倉時代再建の回廊
調査は2020~22年度に実施。従来説の東端のさらに東にあたる北面回廊の延長線上を調べた。東西約28メートルにわたる北面回廊の遺構が見つかった。13カ所で礎石や据付穴などを検出し、基壇や南北の雨落溝もあった。見つかったのは鎌倉時代に再建された回廊だが、火災による堂宇の焼失を繰り返した興福寺ではその都度、創建当初の姿で再建されてきた。この部分の回廊も創建当初からあったとみられる。
東金堂の回廊は文献や地上に露出していた礎石の位置から南北に110メートル、東西51メートルと想定されていた。その後、創建からの縁起を記した平安末期の「興福寺流記(るき)」に南北110メートル、東西130メートルとの記述があり、「檜皮葺双堂(ひわだぶきならびどう)」とその「副殿」、「檜皮葺掃守殿(かにもりでん)」と建物名が記載されていることが判明。従来説の長細い敷地ではこうした建物を建てる場所はなく、東西は130メートルとの見解が示されたが通説を覆すには至らなかった。東端は検出されていないが、奈文研はこの見解による伽藍配置図も作成した。西金堂には回廊がなかったと考えられている。
◇研究員「重要な成果」
回廊は礎石建ちで通路1本の単廊。幅は3・6メートル、基壇幅は6・6メートル。礎石には、柱を乗せたまま火災で焼け、円柱の痕が残っているものがあり、柱の直径が36センチと判明した。上部の組物などは定形化しており、直径がわかれば復元できる。雨落溝から屋根の張り出しも分かった。奈文研は鎌倉時代の類例も参考に回廊の復元図を作成。切妻造、本瓦葺、連子窓を備えると想定した。
調査に当たった垣中健志研究員は「中金堂、東金堂、西金堂と中心が三つあり、それぞに独立性を備えながら総体として興福寺になっている。こうしたことが創建時から計画されていた。興福寺の性格を考える上で重要な成果だ」と話した。【大川泰弘】
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