米証券取引委、マスク氏を提訴 ツイッター買収で保有株報告せずか

2025/01/15 10:35 

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 米証券取引委員会(SEC)は14日、2022年のX(当時はツイッター)買収を巡り、株式取得状況の報告義務を怠ったとして実業家のイーロン・マスク氏を提訴した。ツイッター株の大量保有状況を隠して買い進めることで、少なくとも1億5000万ドル(約230億円)、不当に安く購入したと訴えている。

 SECによると、ツイッター買収を画策していたマスク氏は22年3月にツイッター株式の5%超を取得。法律では5%超となった時点で株式保有状況をSECに報告し公開するよう義務づけられているが、意図的に報告しなかったとしている。マスク氏は3月25日から4月1日にかけ5億ドル相当のツイッター株をひそかに買い進め、9%超となった4月上旬になって初めて報告した。

 大量の株式購入が明らかになれば市場でツイッターの株価が急上昇し、それ以降は高値で買わざるを得なくなる。実際、マスク氏の大量取得が明らかになった直後、ツイッター株価は27%上昇した。

 SECはマスク氏が法律に従い3月時点で大量保有を公開していればツイッター株が値上がりし、その後のツイッター株の購入には、実際の買い取り額に比べ1億5000万ドルを超える追加資金が必要だったとの見方を示している。

 マスク氏は14日、「(SECは)完全に壊れた組織だ。処罰されない犯罪が多くあるのに、こんなくだらないことに時間を費やしている」とXに投稿し、提訴を批判した。マスク氏はかねてSECと衝突を繰り返し「政治的に汚い仕事をする機関に過ぎない」と存在意義を否定するような投稿もしている。

 米メディアによると、マスク氏の弁護士は「マスク氏は何も悪いことをしていない」との声明を出した。

 マスク氏と対立してきたSECのゲンスラー委員長は退任し、今月20日に発足するトランプ政権では、規制緩和を重視するアトキンス氏が起用される見通し。米メディアは「(政権への影響力の強い)マスク氏が新委員長に訴訟取り下げを依頼するだろう」との見方を伝えている。

 マスク氏は、自らがトップを務める電気自動車(EV)大手テスラ、宇宙企業スペースXなどで多くの訴訟を抱えている。昨年10月には、米SF映画「ブレードランナー2049」の製作会社から、「作品を象徴する画像をテスラ主催のイベントで無断使用された」として著作権法違反の疑いで訴えられた。

 テスラ車の自動運転技術の性能を誇張して宣伝しているとの株主訴訟では「訴え棄却」の判決を勝ち取ったが、カリフォルニア州当局による同様の訴訟は継続している。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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