「リーマン級の影響出る恐れも」 トランプ関税に憂慮深める日本企業

2025/04/11 21:04 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 トランプ米政権が世界各国からの輸入品に「相互関税」をかけると発表してから1週間余りが経過した。発動から約13時間後に上乗せ分を90日間停止すると表明するなど唐突な方針転換に加え、米中による関税引き上げの応酬もエスカレートする一方だ。企業は先行きを見通せず、景気後退への懸念も強まっている。

 「米国はこれから事業を大きくしていこうというエリアなので(まだ経営に)インパクトが出るという時期ではない。ただ、中国の景気減速は大変懸念している」。無印良品を展開する「良品計画」の清水智社長は11日のオンライン決算記者会見でこう述べ、トランプ米政権の相互関税と中国による報復措置の掛け合いが過熱する現状を憂えた。

 同社は海外717店舗のうち、中国大陸で半数以上の418店舗を展開する。この日発表した2025年2月中間連結決算で、中国事業は増収増益。上半期の既存店とEC(電子商取引)の売上高も前年同期比6・0%増と、当初の計画を超える好調ぶりを見せたが、清水社長は、米中対立の激化に「少なからず(現地の)消費マインドに影響は出ると思う」との見方を示した。

 武藤容治経済産業相は11日の閣議後記者会見で「米中間の『貿易戦争』がそれぞれの国にプラスになるのか。決して世界のためにならない」と強い懸念を表明。だが中国政府はその後、米国からの全ての輸入品を対象とする報復関税の上乗せ幅を84%から125%に引き上げると発表し、対立は一段と激化している。

 一方、中国以外の国・地域への相互関税の上乗せ分はいったん停止されたが、依然として10%の一律関税は残る。90日間の猶予期間に政府間交渉がまとまらなかった場合、とりわけ高率の上乗せ関税が発動されかねないのが東南アジアだ。ベトナムなどに生産拠点を構え、世界で「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「生産地はいくらでも変更できる」と述べ、生産調整も視野に入れる。

 また、自動車に対する25%の追加関税は今なお課されたままだ。自動車業界からは「日本の産業全体で向き合っていく問題から、また自動車の問題に戻ったように感じる」(自動車大手関係者)との声も漏れる。米国での自動車販売が減少すれば、打撃は部品や素材メーカーにも波及する。ある鉄鋼大手の関係者は「自動車向けは数量面でも大きい。影響は大きい」と危機感を隠さない。

 「貿易戦争」の激化は、国内の景気減速にもつながる恐れがあるだけに、内需型産業の事業環境にも影を落とす。「今までの自由貿易が大きく変わる可能性がある。(そうなれば)リーマン・ショックに匹敵するぐらいの、日本経済、世界経済への影響が出てくる」。スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションの岩崎高治社長は10日の決算会見でこう懸念し、「輸出企業を中心に業績が悪化して、ようやく中小企業にも出てきた賃上げムードが止まり始めると、遅れて個人消費にも影響する」と警戒感を示した。

 半導体製造装置向けのモーターや産業用ロボットなどを手がける安川電機の小川昌寛社長は、4日の決算会見で「トランプ関税の影響は最大のリスク。何が起きるのか分かりにくい」と語った。26年2月期の連結業績予想は売り上げ収益2・3%増、営業利益19・6%増を見込むが、関税の影響は織り込んでいないという。【鴨田玲奈、佐久間一輝、大原翔、成澤隼人、渡辺暢、久野洋】

毎日新聞

経済

経済一覧>

写真ニュース