豊田織機が買収提案受け入れ モビリティー産業の成長描けるか

2025/06/03 21:24 

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 トヨタ自動車の源流企業に当たる豊田自動織機は3日、トヨタグループによる買収提案を受け入れると発表した。トヨタ自動車、同社の豊田章男会長、グループ会社のトヨタ不動産が出資する持ち株会社を新設し、豊田織機の株主とする。各国・地域の競争当局の審査を経て12月上旬に株式の公開買い付け(TOB)を実施し、豊田織機の株式を非公開化する。一連の買収にかかる費用は約4・7兆円。非上場化で柔軟な経営判断が可能になることを生かし、変革期にあるモビリティー産業での成長を描けるかが焦点だ。

 持ち株会社への出資額はトヨタ不動産が約1800億円(議決権99・5%)、豊田会長が10億円(議決権0・5%)。トヨタは議決権のない優先株で約7000億円出資する。

 TOB価格は1株当たり1万6300円。デンソー、アイシン、豊田通商のグループ3社はTOBに応じ、保有する豊田織機の全株式を売却する。TOBにかかる費用は約3・7兆円。豊田織機は、保有しているトヨタを含むグループ4社の株式を約3・1兆円で売却するほか、トヨタが保有する自社株を約1兆円かけて取得する。こうすることで4社と豊田織機の株式の持ち合いは解消される。

 非上場化にかかる費用のうち、約2・8兆円分は三菱UFJ銀行や三井住友銀行などの融資でまかなう。

 今後の焦点は、巨額資金を投じたグループ再編で、競争力の強化につながるかどうかだ。

 2024年9月末時点で、豊田織機の株式はトヨタが24・2%、デンソーが6・78%保有。豊田織機もトヨタ株式の約9%を保有し、デンソーやアイシンなどとも互いに株式を持ち合ってきた。そのため、資本の有効活用などの観点から近年、機関投資家などからの売却圧力が高まっていた。

 対応として非上場化という方針を決めたトヨタグループ。3日に取材に応じた豊田織機の伊藤浩一社長は「志や価値観を共有する新しい株主とともに、より迅速な意思決定、より果敢な投資を実行し、より大きなチャレンジを進める」と述べた。投資家からの圧力を回避できることを踏まえ、電動化を見据えた電池開発の加速など、長期的視点に立った経営判断につなげていく。

 また、自動車分野では「経営の自由度が確保されるメリットを生かし、トヨタグループ以外の自動車メーカーへの拡販を維持強化する」と説明した。

 豊田織機はフォークリフトなどの産業車両やカーエアコンを手がける。豊田会長の曽祖父に当たる豊田佐吉氏が1926年に設立した豊田自動織機製作所が前身で、自動車部門が37年に独立して現在のトヨタになった経緯がある。

 トヨタの豊田会長が10億円を出資することについて、トヨタ不動産の近健太取締役は「『資本家』としてこの枠組みをサポートする」と述べた。資本家と表現したことについて近氏は「投資家とは少し違う。個人が非公開の会社に長期でコミットメントをする、短期的でなく長期で支えようというのが私は資本家だと思う」と説明した。【大原翔】

毎日新聞

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